日本の投信市場、「分配型一辺倒」から脱却を スイスの資産運用大手、ピクテのCEOが語る

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 6月12日、スイスの資産運用大手、ピクテ・アセット・マネジメントのロゴン・ラムゼイ最高経営責任者(CEO)は、日本の投資信託市場について、毎月分配型ファンド一辺倒から脱却すべきだとして、多様な資産に分散投資するマルチアセット型商品などの推進に努めていく考えを示した。写真はロイターのインタビューに応じる同最高経営責任者。9日都内で撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 12日 ロイター] - スイスの資産運用大手、ピクテ・アセット・マネジメントのロゴン・ラムゼイ最高経営責任者(CEO)は、日本の投資信託市場について、毎月分配型ファンド一辺倒から脱却すべきだとして、多様な資産に分散投資するマルチアセット型商品などの推進に努めていく考えを示した。

同社は、1805年創業のプライベートバンクを発祥とするピクテ・グループの資産運用部門で、本拠地はスイスのジュネーブ。グループの運用・管理資産残高は今年3月末時点で4880億スイスフラン(約55兆円)。

インタビューはラムゼイ氏が来日した9日午後に実施した。概要は以下の通り。

──英総選挙は与党・保守党が下院過半数を割る結果となったが、投資判断に変更は。

「今回の選挙結果は、国民の、また英国のEU離脱における強硬路線(Hard Brexit)と穏健路線(Soft Brexit)の間の、分断の深刻さを改めて浮き彫りにした。結果的に穏健離脱派の勢力が上回り、保守党が過半数を失ったことにより、ただでさえ複雑な離脱交渉が一段とややこしくなった。さらには、離脱交渉の結果についての不確実性が高まった」

「英選挙のマーケットへの影響としては、見ての通り、英国通貨のポンドが下落している。一般的に言って、英国にとって自国通貨安は株式にポジティブだ。ゆえに短期、具体的には3カ月程度の時間軸で、ポンド安が追い風となり、英国の特に大型株がアウトパフォームすると考える」

「実は当社では、このところ上昇傾向にあったポンドの調整があると見越して、2週間前に英国株式の投資判断をオーバーウエイト(強気)に引き上げたばかり。それが奏功したと言える。引き続き、その判断を維持したい」

──日本については。

「現在、株式をオーバーウエイト、債券をアンダーウエイト(弱気)している。株式の中では、割高感のある米国を除く全ての地域に強気スタンスだ。日本株は1年余り前から強気を維持している」

「経済のファンダメンタルズ、企業業績、日銀の緩和的な政策、バリュエーションなどを理由に、日本株には関心を持っている。アベノミクスについては当初の熱狂が冷めて最近は話題にならないが、ここまでの進捗には概ね満足している。政権の安定性、緩和的な金融政策、コーポレートガバナンスの改善、そのいずれもが日本株にとってポジティブだ」

「為替については、先述のポンド安のほか、われわれはドルが現在の水準からもう一段下げると考えており、それが新興国株に強気な理由になっている。また、ユーロとスイスフランについては上昇を見込んでいる」

──今回の来日、機関投資家や投信販売会社とのミーティングで印象に残ったことは。

「日本の金融庁が資産運用業界の枠組みの適正化に乗り出したことが複数のミーティングで話題に上った。フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)の徹底などの取り組みは、日本の資産運用業界への信頼性を高める大変良い動きだと思う」

「当局が高分配ファンドを規制する姿勢を強めていることを歓迎する。分配金が適正水準にあってこそ、投資家は複利効果を享受できるからだ。分配型商品が一律に悪いというわけではなく、投資収益に見合わない高額な分配金が問題との認識を持っている」

「当社はもともと、業界の先陣を切って(2015年10月に)分配型投信の分配金を減額した経緯がある。もちろん、分配金を引き下げた当時は解約が相次いだ。しかし、その後他社の商品も減額に追随し、分配金の水準は正常化に向かいつつある。とても満足している」

──日系の投信販売会社や運用会社には頭を悩ますところもある。

「販売会社によってはその実践に困難を伴うところもあると思うが、こうした動きは顧客にとって正しいことであり、ひいては業界にとっても正しいことだ。顧客にとって正しいことをする、それが全て。残りはそれと整合するよう動くだけだ。でなければ、システム全体に傷がついてしまう」

「創業200年余りのプライベートバンクをルーツに持つ当社は、顧客の資産を長期にわたって保全することに力点を置く金融機関だ。われわれのようにパートナー制で長期目線のビジネスを行う場合、顧客のために正しいことをすることこそが利益につながる。それが、四半期ごとに結果を求められる他の上場会社と違う点だろう」

「一連の取り組みの結果、日本でも、マルチアセット戦略への関心が新たに高まる兆しが出ている。超低金利で預貯金がほとんどリターンを生まない日本において、比較的保守的な運用を目指すマルチアセット型のファンドが、既に人気を得ている海外と同様、預貯金にとって代わる形で広がることを期待する。それが、投資信託業界に活力をもたらすことにもつながると確信している」

 

(インタビュアー:植竹知子 編集:伊賀大記)

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