設備投資に頼った成長戦略は、最悪の選択 増税による景気悪化に備え、設備投資減税をしても効果なし

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ここで最も重要なのは、今、なぜ、まともな企業は設備投資をしないのか、ということである。設備投資をしない理由が、高度成長期に設備投資不足だった理由とは決定的に違うのだ。高度成長期には、カネが足りなかった。金利が高かった。それが投資できない理由だった。製品に対する需要はあるが、資金制約などにより投資できなかったのである。しかし、今は違う。カネはある。銀行も設備投資ならいくらでも貸してくれるし、市場で直接調達も出来るし、そもそも利益を企業内に溜め込んでいると言われるぐらい資金豊富である。でも、投資しない。

それは、需要がないからだ。需要がないから投資しない。もし、世界のどこかに需要があって、設備投資しさえすれば、その需要をつかむことができ、しかも利益が上がるということがあれば、政府に減税してもらわなくても自ら設備投資をしている。円安になってすら、自動車が絶好調になってすら、ホンダもスズキも国内に必要以上に設備投資をする気はない。需要が今後増える市場が米国なら米国で、中国なら中国で設備投資と生産をするからだ。

顧客を見なくなった、不振企業たち

したがって、政府が減税しても、それは実質、補助金にしかならない。これまですでに設備投資している部分に対する減税額が実質的に増えるだけのことだ。したがって、設備投資が仮に増えたとしても、節税効果というのがメインだから、売り上げが大幅に増えるわけでもないし、利益率が大幅に上昇するわけでもない。だから、波及効果も小さい。投資は投資を呼ばないのである。

もし、こうした中で強引に設備投資減税をし、かつ設備投資を実際に行うこととなったらどうなるか。あるいは、経営者の側にも設備投資信仰があった場合にはどうなるか。ここ数年の、家電メーカーのようになってしまう。シャープやパナソニックの失敗は、設備投資信仰から来ている。とにかく設備投資で勝負。これはそもそも間違っている。そこへ、政府が地上デジタル、エコポイントなどという餌を撒いたものだから、彼らはその残飯に群がった。そして、それらの餌がなくなり、経営は危機に陥ったのである。

彼らの誤りは、個々の顧客をみなくなったことである。

企業は生き物である。そして、日々、闘っている。消費者、顧客のニーズを捉えるために闘っている。そのときに、需要をうまく捉えられる見込みがあれば、設備投資をしてまでも、その需要に効率的に、より魅力的にアプローチしようとする。より高品質で、顧客のニーズにあったものを作るために、設備投資をする。顧客も喜ぶから、高い価格を支払ってくれる。付加価値が増大している。だから、企業も利益が増える。だから、設備投資に踏み切る。給料も多く支払えるようになる。労働者も新しい、より付加価値の高い製品を生み出す労働力として、付加価値の高い労働力となる。人的資本を蓄積する。こうなってくれば、設備投資は、極めてよい循環をもたらすのである。

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