USJ躍進担う「必然的に選ばれる戦略」の本質 マーケター森岡氏が「確率論」の考えを明かす

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たとえば、今期の売上高が100億円だったとする。それを52で割ると、1週間の売り上げが1億9000万円と出る。そこから私の場合、1週間で1億9000万円を生み出したのはいったい何なのかを問う。すなわち、1億9000万円という売り上げは、何人が何回、いつサイコロを振った結果なのかを考える。

世の中は確率に支配されている。消費者があるブランドを購入する確率、つまり毎週の売上高も、いつ、何人が、何回サイコロを振ったかで決まる。こういった確率論を応用したマーケティングのノウハウを、USJにも応用した。

経営戦略の核心は平均確率をどう上げるか

森岡毅(もりおか つよし)/元ユニバーサル・スタジオ・ジャパン チーフマーケティングオフィサー 1972年生まれ。神戸大卒業後、P&G入社。米国本社でのブランドマネジャーなどを務めた後、2010年に株式会社ユー・エス・ジェイ入社。数学やデータ分析に基づく新しいアイデアを投入し再建に貢献。17年1月に退職。著書に『確率思考の戦略論』(今西聖貴氏との共著、KADOKAWA)など

1つの核となる概念がポアソン分布だ。

ポアソン分布とは、一定期間の中でまれに独立して起きる事象の回数が、どのように分布するかを説明するのに使われる。たとえば、1週間のうちに私が缶コーヒーを購入する頻度は5回だったとしよう。もちろん毎週必ず5回買うとは限らない。週3回だったり、週8回だったりするときもある。

だがもっと長期で、たとえば1年を通じて眺めてみると、私が缶コーヒーを何回買うかの確率は、平均回数5を中心に、山のような形で分布しているのである。酒やたばこなど依存型の消費を除けば、実はほぼ全部のカテゴリーで個人の購買行動はポアソン分布の形状で表される。テーマパークのチケットもトイレタリー商品もビジネス雑誌も、この意味では同列だ。

ここでの重要な示唆は、人間の行動には一定のサイクルがあるということ。個人個人を見ると買ったり買わなかったりしていても、合算すると、確率分布に従っている。だからわれわれにできるのは、市場全体で見たときの購買の平均確率を上げること。それに尽きるということだ。

具体的には、認知率、配荷率(客の手の届く範囲にどれだけ商品を配置できているか)をいかに伸ばすか。そして相対的好意度(プリファレンス)を高めて、自社が選ばれる頻度をいかに上げるかがポイントになってくる。

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