アップルが「HomePod」で見せた絶妙な戦略 グーグル・アマゾンと違うアプローチを披露
全方向に向いたツイーターは、その役割を自動的に決める。正面に向いたツイーターは、ボーカルなどを直接リスナーに届け、壁に向いたツイーターは壁の反射を利用し、包み込むような音場作りに寄与する。1台でも豊かなサラウンドを作り出す仕組みが備わっていた。その心臓部には、iPhone 6に用いられていたA8プロセッサが埋め込まれる。
アップルがHomePodで意識しているのは、スマートホームのハブ、という役割よりもむしろ、Apple Musicの利用促進だ。
ストリーミング音楽は、スマートフォンやタブレット、パソコンを介して楽しむことがほとんどで、Bluetoothスピーカーを使う際にも、スマートフォンから音楽再生をしなければならなかった。そのため通話やビデオ再生のたびに部屋の音楽が止まってしまい、音楽体験として不完全なものとなっていた。
Amazon EchoやGoogle Homeも、スマートフォンなしで音楽を楽しむことができる点が、人工知能やスマートホーム以上に強いニーズになりうる。しかし、実際にこれらのスピーカーを部屋に置いてみると、満足のいく音質を得ることはできなかった。オーディオ機器として評価できる製品とは言えなかったのだ。
そこにアップルは目をつけた。HomePodが、スピーカーとして妥協せず音質にこだわっているのは、「ストリーミング音楽時代のスピーカー」という提案をより確実なものとするため、と見ることができる。
Siriとスマートホームを控えめにした「さじ加減」
現在米国で販売されているワイヤレススピーカー「SONOS」は、一足先にApple Musicに対応しており、SONOSのアプリから指定すれば、iPhoneの音楽再生機能を使わなくても、スピーカーが直接ストリーミング音楽を受信し再生してくれる。
アップルは、Apple Music対応のアプリやスピーカーを拡大させる計画で、今回のWWDC 2017でApple MusicのAPIを公開し、SONOSと同様のアプリやスピーカーを開発することも可能になった。
加えて、ワイヤレスで音楽を再生するAirPlay 2も登場し、iPhoneで家にある複数のスピーカーの一括管理にも対応した。ワイヤレススピーカーのパートナーとして、ボーズ、バング&オルフセン、アップル傘下のBeatsなど、人気のオーディオメーカーから対応スピーカーを登場する予定だ。
スマートスピーカーは「ポストスマホ」の呼び声も高いが、アップルのHomePodからは、そうした次世代を担う存在感を聞き取ることはできなかった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら