アップルが「HomePod」で見せた絶妙な戦略 グーグル・アマゾンと違うアプローチを披露

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iOS 11とともに紹介されたSiriの機能拡張の範囲が期待外れだったことからも、このHomePodが「iPhoneの代わり」と言えるほど重要な存在にはなりえない。アップルの売り上げの6~7割を占めるスマホビジネスを、みすみす縮小させる理由はないのだ。

HomePodも、あくまで、ストリーミング音楽サービスを使っているiPhoneユーザーが、自宅で快適に音楽を楽しめるようにするアクセサリ、という位置づけを超えることはない。

アップルがテクノロジーのすべてのトレンドを決めるわけではないが、HomePodがオーディオ製品としての色を濃くしたことは、スマートスピーカーが将来の生活の中心にはならない、というアップルによる宣言となった。

しかし、アップルは349ドル(約3万8000円)というHomePodの価格について、ワイヤレススピーカーとスマートスピーカーを両方そろえた金額の半分で済む、と説明する。AIスピーカーはメインストリームにはならないとしつつも、「アップル製品はお買い得」と説明するあたりが、今回のアップルの絶妙なさじ加減だった。

競業製品であって、競り合わない戦略

「HomePod」のホワイト(筆者撮影)

HomePodの登場は、前述のとおり、AIスピーカーの時代の到来を退けるような意思表示を感じるとともに、オーディオ機器として、そしてスマートホームのハブとしても中途半端だった既存の製品と差別化する、「音にこだわるスピーカー」というキャラクターを与えることになった。

しかし、音声アシスタントのSiriにも対応しており、ほかのアシスタントと同じように、スマートホームのコントローラーとして利用したり、ニュース、天気、スポーツ、スケジュールなどの問いかけに対して、きちんと応えてくれる。

明確な役割と購入理由を与えなければ普及や活用が進まない。そんなアップルなりのアプローチで仕切り直した結果、Amazon EchoやGoogle Homeとの真っ向からの勝負を避ける格好となった。

その点で、HomePodは、まずはオーディオ機器としての成功を収めることになるだろう。ただ、繰り返しになるが、それがAIスピーカーの時代の到来になるとはかぎらないのだ。

HomePodは、2017年12月に、アメリカ、イギリス、オーストラリアの英語圏3カ国で発売の予定だ。Siriはすでに日本語も含む幅広い言語をサポートしているだけに、日本での早期の発売も期待したいところだ。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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