「コミー証言」の証拠価値に疑問符がつく理由 ミュラー特別検察官のバランス判断がカギ

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コミー氏が電撃的に解任されたのは5月9日だった。2月14日の会合から3カ月近くコミー氏は仕事をしていた。その間、何があったのか。クリーンハンドでないとなると、コミー・メモの証拠価値がどの程度のものか疑わしいと批判されても仕方あるまい。

コミー氏が電撃解任されてほぼ1週間後の5月17日、司法省は、大統領選挙期間中の「ロシアゲート」疑惑を捜査する特別検察官として、ロバート・ミュラー氏を任命した。同氏は元FBI長官であり、コミー氏の前任者でもある。コミー氏はその部下として一緒に働いた期間も長い。ただ、両者には捜査手法の違いがある。

たとえば、テロ事件に関連した捜査を行ったとき、アップルのiPhoneに記録された情報を取り出す必要があり、コミー氏は直接、アップル社に当たって取り出しを強制したことがある。同社は、ユーザーのプライバシーを保護することを名目に、コミー氏の命令を拒否した。これに対してコミー氏は、執拗にアップルを攻め立てた。

ミュラー氏は先例を重んじるバランス型タイプ

そんな強引な手法を、ミュラー氏は取らない。ミュラー氏は訴訟弁護士としても著名で、先例を重んじる。コミー氏とは違い、上記の案件でも、議会の協力も合わせ技として引き出そうとした。つまり、バランス型タイプといえる。

判例法で成り立つアメリカ法の下では、先例を重んじるのは、いわば鉄則である。今回、ミュラー特別検察官が先例を重んじて攻めるとすれば、大統領を辞任に追い込んだという意味での先例としては、ウォーターゲート事件をおいてほかにない。

リチャード・ニクソン元大統領に弾劾確実と覚悟させ、辞任に追い込んだウォーターゲート事件。そのターニングポイントは、1973年10月20日の「土曜日の夜の虐殺」と呼ばれる「解任・辞任劇」にあった。

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