医学部浪人生が語る「僕が現役で落ちたワケ」 膨大な暗記量も奇問を解く力も必要なかった

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その勉強法も、A君がこれまでしてきたものとは少し違った。ペンをせわしなく動かすというよりは、教科書をじっくり精読し、全体を鳥瞰(ちょうかん)している。問題を解いては、この問題の背景には何が問われているのかをじっくりと考え込む。彼の口癖は、「そうか、そういうわけか」。

暗記:理解=3:7の法則

この生徒を傍らで見て、A君はハッとした。現役時代の自身の勉強法は、多くの受験生がそうであるように、とにかく暗記するというその場しのぎのもの。暗記の総量が増加すれば、自動的に合格すると思い込んでいた。しかし、どれだけ暗記しようとも彼の成績は伸びなかったのである。その原因が判明した。

そこで彼は、見よう見まねで、勉強の舵取りを大きく変えてみた。これまで暗記のみに頼ってきた題材の背景にある、概念や理論的な構造を丁寧に理解するように努めたのだ。たとえば数学であれば、公式を暗記し、それに当てはめて問題を解くことを重視するのではなく、なぜこの公式が導き出されたのか、他の分野との関連でこの公式はどういう意味を持つのか、もし仮に公式がない場合この問題にどうアプローチするかなど、「理解」「探究」という姿勢を貫くようにした。

もっとも、暗記勉強法それ自体がダメだというわけではない。現役時の失敗の背景には、暗記をしたこと自体ではなく、全体の勉強量における「暗記に頼る比率」にあると思われる。一般的に、受験勉強において最低限2割から3割は暗記しなければならないからである。A君の現役時の問題点は、2~3割ではなく、丸々10割暗記しようとしていたことにある。よって、A君が暗記の比率を減らし、理解・探究の比率を増やしたことで「かすみが晴れるように、学問の見通しがよくなっていった」(A君)のは、ある意味自然なのである。

A君に限らず、浪人生の複数が、現役時の暗記勉強法を改め、理解・探究型に切り替えたことで見事合格をつかみ取っていた。

では、3番目に質問をした、実際の入試において合否を分けるポイントとは何か。複数の教え子に共通していた回答は、「基礎を理解して臨むことが大事で、応用はいらない」という言葉だ。これは、長い指導経験の中で私も受験生に対してよく口にしてきた言葉でもある。

B君(1浪後、偏差値72程の私立医科大学に合格)の言葉を借りるならば、「初歩的なことを侮らず、ひたすら基礎をコツコツ継続的に積み上げていくことが大事」ということだ。B君によると、基礎を徹底的にマスターしていれば、パッと見て解けそうにない応用問題が出題されても、怖がる必要はないという。「自分がマスターしている基礎のどれと結び付ければいいのかを考えれば、大抵の応用問題は解ける」(B君)からだ。つまり、応用問題は基礎的概念の複合物というわけだ。

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