資本主義が流入?外国との接触増やす北朝鮮 技術研修や出稼ぎなどで、外国に触れる国民が急増中

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北朝鮮からの出国者数が増えたのは、2010年に故・金正日総書記が当時の胡錦濤国家主席と会談し、文化や教育、体育分野などで青少年交流を強化することに合意したこともきっかけの一つだ。

また、前述したような労働者や公務員、留学生として海外に渡る者も、実は少なくない。すでにロシアには2万人、クウェートなど中東や東南アジアには1万人、モンゴルにも1700人が派遣されている。留学生も中国の東北3省(遼寧省、吉林省、黒竜江省)だけでも2000人が留学中という。また、ロシアやポーランド、フランス、スイス、ドイツなどにも留学生が派遣されている。

海外での生活を経験した人が増えたことで、北朝鮮の首都・平壌を歩く人の姿も徐々に変化の兆しが見えている。平壌市内には、中国資本で開業した「光復地区商業中心」をはじめ、大型スーパーや娯楽施設が建設され、店内には中国など外国製品も多く並べられている。これまで数回訪朝し、先月も平壌を訪れた日本人研究者は「ファッションやヘアスタイルなど、中国や日本の女性のように洗練された服装を身につけた女性が増えて驚いた」と打ち明けるほどだ。「社会主義を死守する」と北朝鮮は主張する一方で、実際には明らかに資本主義的なモノや考えが流れ込んでいるのも現実のようだ。

「時代の要求に合わせ他国の先進技術を受け入れよ」

金正恩第1書記の発言で最近目立つのは、「時代の要求に合わせて」「他国の先進的な技術や成果を受け入れる」というものだ。朝鮮社会科学院経済研究所の李基成(リ・ギソン)教授は東洋経済とのインタビューで「朝鮮は社会主義を守るが、市場経済の国と付き合わなければならない。そのため、市場経済を学び、積極的に適応していく」と述べたことがある。他国の事情もしっかり見つめて、経済政策や企業経営に取り入れて立案・実行していくということだ。

外国人の受け入れなど、まだまだ北朝鮮を取り巻く壁は低くない。だが、彼らの一部は積極的に外国を訪れ、世界の流れを見極めようとしているようだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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