バフェットとベゾス、2人の天才と新聞経営 読者志向を失った名門紙の凋落とこれから

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自ら「売却へ」という20世紀的な見出しを掲げたグラハム家は、ポストを立て直すことができない一家となった。ポストは、読者にそっぽを向かれ、改革を必要とし、売られる運命にあったといえる。

そこに、ベゾスが登場し、ポストを買った。アマゾンは、トイレットペーパーとビジネス本とドッグフードを注文した後、テレビドラマをオンラインで見られるという、徹底して個人レベルの欲望を満たせるサービスだ。

フルームキンは「ポストの長い失墜の後、(自分は)ちょっと頭がぼうっとしているかもしれない」と前置きしながらも、ベゾスがアマゾンで培った“徹底した顧客サービス”のノウハウに期待する。

「私たちがユーザー(=読者)を理解するのに役立ち、ふさわしい商品を提供することができるベゾスのテクノロジーを使えば、(中略)何が欲しいかも分かっていないユーザーに何かを売ることすらできるかもしれない」

ベゾスの買い物は、「高値づかみ」(ロイター通信)という報道もあった。しかし、アマゾンの時価総額は1358億ドル、年間売上高は約611億ドルだ。ベゾスは世界で19番目の億万長者で、ポストの買収額2億5000万ドルは時価総額の1%ですらない。

新しいビジネスモデルを生み出せるか

60日後に、ワシントンの有力新聞オーナーとなるベゾスは、買収発表後、ポスト社員に書簡を出した。

「インターネットは、ニュースビジネスのありとあらゆる要素を変貌させている。私たちに地図はない。そして道を見出すのは容易なことではない。私たちは、道のりを一から作り上げなければならない。すなわち、試行錯誤する必要があるということだ」

これと同じことを、新聞を知り尽くしたグラハム家が、なぜ社員に言えなかったのだろうか。前述のウォレン・バフェットは毎朝5紙、ベゾスは3紙に目を通すという。彼らなら、インターネットを普通の読者が手にしてから20年近くも、紙面がほとんど変化しておらず、何が欠落しているのか、明瞭に見えているのかもしれない。

ベゾスが本気で、ポストにおけるニュースビジネスを再構築し、真に読者を向いたデジタルメディアを創造できれば、低迷が続く新聞界に新しいビジネスモデルが生まれる可能性もある。(文中敬称略)

津山 恵子 ジャーナリスト

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つやま けいこ / Keiko Tsuyma

東京生まれ。共同通信社経済部記者として、通信、ハイテク、メディア業界を中心に取材。2003年、ビジネスニュース特派員として、ニューヨーク勤務。 06年、ニューヨークを拠点にフリーランスに転向。08年米大統領選挙で、オバマ大統領候補を予備選挙から大統領就任まで取材し、『AERA』に執筆した。米国の経済、政治について『AERA』ほか、「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」「HEAPS」に執筆。著書に『モバイルシフト 「スマホ×ソーシャル」ビジネス新戦略』(アスキーメディアワークス)など。X(旧ツイッター)はこちら

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