「日本の生産性」は、どうして低すぎるのか D・アトキンソン×伊賀泰代×木下斉が語る
では、どうすれば生産性を向上できるのか。この点について、伊賀氏は次のように説明する。
「研究活動、営業活動、人材育成、管理業務、意思決定のそれぞれにかかわっている人が、各人で生産性を向上させているかどうか自問することが肝心。たとえば人材育成なら、研修に参加することが生産性を向上させるきっかけにつながっているのか。また、意思決定にかかわっている人なら、1分1秒でも速い意思決定を行っているかどうかを、それぞれ振り返るようにする」
また、会議時間を短縮させることが生産性の向上につながるという人もいるが、「それは間違い。生産性の高い意思決定ができたかどうかが大事であり、会議時間を短縮できたかどうかは、その結果にすぎない」。
経営者や地方の首長にプレッシャーをかけよ
アトキンソン氏は、もっと経営者にプレッシャーをかけるべきだという。
「欧州も、人口が増えないから、社会保障を維持するのに生産性を向上させる必要がある。企業が生産性を向上させ、リスクを取ってリターンを上げないことには、株価が上昇せず、年金運用もままならなくなる。だから、日本も、まずは経営者にプレッシャーをかけること。生産性の向上によって株価が上がれば、投資家はもちろんのこと、企業の従業員や、年金にとってもハッピーになる」
アトキンソン氏が言うように「経営者にプレッシャーをかける」ことは、欧州だけでなく、超高齢社会に入った日本にとっても有効な処方箋だ。
また、プレッシャーがかかるのは企業経営者だけではない。地方の首長クラスも同様だ。
「人口が増え、予算が増えている時代は、大きな施設を造っても何とか回していけたが、今は地方の人口は減少し、予算もない。そのなかで、100億円、200億円規模の損失を伴うような公共事業の失敗をすれば、それだけでリコールにつながる。だから、地方も公共事業も、生産性を無視したものではなく、地方の生産性を引き上げるような事業でなくてはならない」と、木下氏は言う。
人口減少社会を迎える日本にとって、生産性の向上は必須だ。そのためには、組織のリーダーがその必要性を認識することが、何よりも求められる。
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