立地最強の「湾岸タワマン」が抱える不安要素 多摩ニュータウンの惨状から学ぶ対策とは?

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また、保育所や小中学校などの整備も急務だ。この点でも必要十分な整備ができなければ「子育てしにくい街」のレッテルを貼られてしまう。湾岸地区は予定されているだけでも1万戸以上のマンション供給が見込まれるほか、14~18階建ての宿泊施設21棟と商業棟が整備される。五輪後は宿泊施設をマンションに改修し、さらに50階建てのタワーマンション2棟を建設。合計約5650戸のマンションが供給される見込みで、人口が激増する中で整備が放置されれば、さらなる生活利便性の悪化は必至だ。

朝ラッシュ時の過剰な混雑、保育所の慢性的な不足。こうしたことを解消できなければ、湾岸住まいへの需要は、とりわけ担税力のある子育て世帯の需要を減らし、如実に不動産価格への下落圧力が働こう。人口増・世帯数増に合わせた生活利便性の確保が、湾岸地区の行方について大きなカギを握るのは言うまでもない。

また、個別の話になるがすべてのタワーマンションが価値を持ち続けられるかはわからないことには注意が必要だ。タワーマンションの大規模修繕には多額の修繕費がかかるが、分譲時のままの修繕積立計画を続けているようなマンションは危ない。おそらく途中で積立金不足に陥り、必要な修繕もままならず建物の劣化が加速度的に進行、廃虚化するといったマンションも出てくる可能性がある。立地さえよければどのマンションでも等しく価値を維持できるわけではない。

予測される首都直下地震が起きたら…

さらに、懸念されるのは地震の影響だ。今後30年以内にマグニチュード7程度の大地震の発生する確率が70%と予測される首都直下地震が起きたらどうなるか。東京都による被害想定では、湾岸地区の液状化の可能性は5PL超と高い(液状化の危険度が低いとされる値は5PL以下)。道路や上下水道などのインフラ復旧に時間を要すれば、不動産価格がしばらく低迷するのは必至だろう。

立地のよさは確かで、今後の発展にも大きな可能性を秘める湾岸地区だが、ブランドが確立しつつある今だからこそ、将来の「不安要素」をどう解決していくのかが重要である。また東京都や中央区など自治体がどのような構想・ビジョンを持って湾岸地区を形づくっていくのか。今後が注目される。

長嶋 修 不動産コンサルタント(さくら事務所 会長)

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ながしま おさむ / Osamu Nagashima

1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『株式会社さくら事務所』を設立、現会長。以降、さまざまな活動を通して“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”第一人者としての地位を築いた。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任している。主な著書に、『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)、『「マイホームの常識」にだまされるな!知らないと損する新常識80』(朝日新聞出版)、『これから3年不動産とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)など。さくら事務所公式HPはこちら
 

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