神保町「未来食堂」の"非常識な成功"の秘密 ITエンジニアが定食屋をやってみたら…

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少々、極端な例かもしれないのですが、しかし、まわりを見渡してみると、どうでもいいことにエネルギーを割いて、肝心の本業に力を回せていないケースが多々、見受けられるのです。「飲食店開業に向けて食器を探します」と言うわりには、東京中のデパートの食器売り場を訪れていなかったり。

また、時間の使い方で私が心掛けているのは、「XX分までは作業する」と決め、決めた分を守ったらあとはのんきに過ごすというルールです。個人的な考えかもしれないのですが、「今日は〇〇をやろう」と“やる量”を基準にすることはよくないと思っています。なぜかというと、「今日は〇〇をやろう」と思っている時点で、それは“やりたくないこと”だからです。やりたくないことをやろうとしてもなかなか集中できず、ついグダグダと過ごしてしまうもの。でも、時間は確実に過ぎていきます。

時間で区切りをつけておくと「今日はここまで頑張ったし!」と前向きに過ごすことができます。気分がノッてきたら、目標時間をずるずると延ばせばいいのです。

なぜ、未来食堂を手伝うと夢がかなうのか?

ここまで、無駄を見つけ、時間を有効に使うための3つのルールをご紹介してきました。

このほかにも、年間450人の“まかないさん”を見ているうちに、新しいことをやりたいと考えたり悩んだりしている方に特有の、思考や振る舞いのくせがあることに気づいたことがあります。

たとえば、頭の中にぼんやりと浮かんでいる“やりたいこと”をほかの人に理解してもらうのは、思っている以上に難しいものです。自分以外の人たちにやりたいことをわかってもらうためには、その絵を色濃く描くことが大切です。鮮明に絵が描ければ、実現したも同然。ですから、うまく絵を描けていない方には、軽く質問をしながら一緒にイメージを膨らませていくようにしています。

『やりたいことがある人は未来食堂に来てください』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

また、「うまくいかなかったらどうしよう」という不安を抱えている“まかないさん”もたくさんいらっしゃいます。私自身、人一倍ネガティブ思考なものですから、未来食堂をはじめるまではクヨクヨして過ごしていました。そうなると、“解決しなければいけない問題点”と“起こったら怖いこと”がごっちゃになってしまいます。

こういう事態に陥ったときには、“やること”は何で、“覚悟すること”は何か。その2段階で考えると気持ちを整理することができます。

ざっとですが、駆け足で、“まかないさん”たちにぽつぽつ話していることからいくつかご紹介しました。

やりたいことにブレーキをかけるのはただ1つ、私やあなたの心だけ。私も“まかないさん”も、悩んだり立ち止まったりしながら進んでいます。体力や時間は有限であることを意識しながら、新しいことややりたいと思うことを、「始めて」「続けて」「伝えて」いきましょう。今日のこの短い文章で、私の思いがわずかでもお伝えできたなら、うれしく思います。

小林 せかい 「未来食堂」店主

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こばやし せかい / Sekai Kobayashi

東京工業大学理学部数学科卒業。日本IBM、クックパッドで6年半エンジニアとして勤めたのち、1年4カ月の修業期間を経て、2015年9月、東京都千代田区一ツ橋に、カウンター12席の「未来食堂」を開業。メニューは日替わり1種のみ、着席3秒で食事ができる、決算や事業書を公開、「ただめし」「まかない」「さしいれ」「あつらえ」などユニークで超合理的な仕組みを考え、飲食業に新風を吹き込む。こういった活動が評価され『日経WOMAN』ウーマン・オブ・ザ・イヤー2017を受賞

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