「こんな作戦は私も初めて見た」と、柳沢幸雄校長も驚きを隠せない。自身も開成のOBだ。「しかし、来年度の生徒たちがこれをどう評価するかですね。この作戦を両チームがやったら、全部引き分けになってしまいますからね」。
組織の中で埋没しない「個」を育てる
結局、紫組の優勝に終わった。閉会式、柳沢校長が生徒たちの健闘をたたえる。
「開成健児諸君! 実に見事な運動会だった。これだけの運動会を企画し運営した生徒諸君に心から敬意を表します。よくやった。その経験は、開成を巣立っても、10年、20年、50年経っても分かち合える。君たちは運動会の準備のために、この1年間でいろいろなことを経験したことだろう。この地点にまで到達したことを高く評価します。
今日、家に帰ったら2つのことをしてください。1つはゆっくりお風呂に入って疲れを癒やし、明日への英気を養うこと。もう1つは、今日この運動会の実現を支えてくれる人たちがいることを忘れないように。特に今日は『母の日』です。口には出さなくても、普段から君たちも、お母さんへの感謝の気持ちを忘れてはいないとは思います。でも今日はぜひ、言葉に出して感謝の気持ちを伝えることを実行してほしい」
東大合格者数で注目を集めることの多い開成だが、開成の教育の神髄は実はここにある。巨大な組織の中で個性を発揮し、自らの使命を果たす人を育てる教育だ。その実戦の場が運動会なのである。
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