東大合格No.1の開成は運動会で生徒を育てる イベント会社も顔負け! 開成生の仕切り力

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つい数カ月前まで受験勉強に追われていた中1の生徒たちは、いきなりの「しごき」に面食らう。放課後はほぼ毎日、運動会の練習をさせられ、ふらふらになって家路につく。

競い合うのは競技での勝ち負けだけではない。各組の応援歌「エール」は毎年生徒たちが作詞・作曲する。「アーチ」と呼ばれる約15m四方の巨大な絵画も、組ごとに毎年生徒たちが描く。エール賞とアーチ賞があり、来場者にも投票をお願いし、優勝を決める。いわば、運動会の場でクラス対抗「合唱コンクール」と「絵画コンクール」を行うようなものだ。

頭脳で筋肉を圧倒する

2017年5月14日、創立146周年記念開成学園大運動会が挙行された。

運営本部のテントにはいくつものトランシーバーやビデオカメラが用意され、準備委員、審判団、審議会のメンバーがつねに慌ただしく動いている。グラウンド上の競技の進行を見ながら、各部署にトランシーバーで2手先・3手先の指示を出す。テントの中に教員は1人もいない。教員は、救急車を呼ばなければいけないようなケガ人が出たときや災害時など、よほどの場合でないかぎり会の進行には口を出さず、観客の立場に徹する。

各競技には数十名の審判団が動員され、反則を厳しくチェックする。反則を犯した者はすぐに退場させられる。退場者が出れば出るほど戦いは不利になる。勝っても涙、負けても涙。試合終了後はまるで部活の引退試合の様相だ。

中でも高3の棒倒しは80年以上の歴史を誇る、開成の運動会の象徴。攻撃、遊撃、迎撃、サードというポジションに分かれて、それぞれが役割を果たす。相手の棒の先端を140cm以下まで倒すか、棒の根本を50cm以上浮かせば勝ちだ。

2回戦で「頭脳戦」を象徴するような「事件」が起きた。

青組対黒組。練習試合での力の差は歴然。下馬評は圧倒的に黒組が有利だった。しかし運動会当日、青組は奇策に出た。なんと試合開始直後に、自ら棒を傾けてしまったのだ。会場中が目を疑い、そしてどよめいた。

棒を垂直に保つのではなく、最初から傾けて、その下に防御の選手たちが肩を入れ、それ以上棒の先端が下がらないように固定してしまったのだ。最初から「肩入れ」という防御の姿勢をとったのである。

黒組の攻撃の選手が怒濤のように青組の棒に襲いかかるが、びくともしない。会場のどよめきはボルテージを増す。黒組攻撃陣に焦りが見え始める。そうこうしているうちに青組の攻撃陣が黒組の棒に手をかける。一方、青組の棒はやはりびくともしない。

時間の問題だった。黒組の棒が完全に倒されると、会場中が拍手喝采に包まれた。観客席の教員たちも「えー、こんなの初めて見た!」「ルール上、これはいいんだっけ?」と興奮ぎみ。

悔しいのは黒組である。何が起きたのか理解できない様子で茫然自失状態。青組としてはしてやったりだ。黒組の保護者は「ずるい! 競技の趣旨に反する」と怒りをあらわにする。しかしルールは破られてはいない。青組は同じ作戦で勝ち上がり、なんとトーナメント戦を優勝してしまった。

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