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日本流「過剰サービス」は誰も幸せにしない 「カネを取れないサービス」は本当に必要か

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  • 伊藤 元重 東京大学名誉教授、学習院大学国際社会科学部教授
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このように日本中のさまざまな業界で、そこまでのニーズがあるのかどうかわからない、奇妙なサービス競争が行われています。そのことが、長時間働いている半面、生産性が低いというデータにつながっているのでしょう。

生産性が低い企業は労働者に逃げられる

同じ産業や同じ業種の中でも、生産性が高い企業と低い企業の差が非常に大きいことは、日本経済のひとつの特徴です。

生産性が低く賃金を上げられない企業から、生産性が高い企業へと労働者が移動してしまえば、彼らに逃げられた企業は立ち行かなくなります。

ところが、日本では転職を容易にするような労働市場の流動化が進んでいなかったために、こうしたことが起こりませんでした。このことは企業間の生産性格差が温存された一因だとされています。

日本企業はこれまで、転職したくてもできない労働者に単に長時間労働をさせて、生産量や売り上げを増やしてきたのではないでしょうか。

ブラック企業と呼ばれる企業がしてきたことは、まさにそれだったのではないかと感じます。いわば経済全体でだましだましやってきたのです。

しかし、人手不足を背景に労働市場の流動化が促されている今日、そうしたやり方が限界を迎えたことは明らかです。

やみくもにサービス競争をし、生産性を低下させている企業は労働者に逃げられ、行き詰まり、その結果、業種内での再編や淘汰が起こってくるでしょう。

安倍政権は名目GDPの3%成長を目指しています。その場合、賃金も3%成長することになります。言い換えれば企業の人件費が毎年3%ずつ上がっていくということです。

人件費上昇分をそのままポンと上乗せするような値上げが通用するケースは、まれでしょう。だとすると利益を確保するためには、商品の付加価値を毎年3%上げるか、労働生産性を3%上昇させるしかありません。

毎年、継続的に労働生産性を向上させていこうとしたら、「今の仕事をもっと少ない人数でやれ」といった、輪の上を走るハツカネズミの尻をたたくようなやり方では到底実現できないでしょう。そうではなく、仕事の効率性を見直すという発想が、今こそ求められているのだと思います。

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