読み書き障害をもつ人が広告業界に多い理由 「脳内の配線が少し人と違うだけ」
ディスレクシアを抱える人は、物ごとをさまざまな方向な角度から同時に見て、複雑な概念を素早く考慮することができる」と、ジャーショニー氏は語る。「ブランドが革新的な発想を求めるコミュニケーションの世界では、これはとてつもなく大きな財産となる」。
幼少期にこれらの障害によって苦労してきた人々が、いまは彼らが抱えているディスレクシアや自閉症を価値ある財産として見ていることは不思議ではない。「自閉症を自分の『スーパーパワー』だと思っている」と、リア氏は語る。「進化論でいえば、我々は未来、定型発達した人(精神医学的な健常者)は過去かもしれないー『エックスメン』(X-Men)のように」。
偏見を乗り越える
これまで、学習障害や発達障害に関わる偏見は数多く見られてきた。ヒュージ(Huge)のCFO、ラジ・シンハル氏にとっては、彼が11歳の頃に中学校に入学するには知性では不十分であるといわれたことが、それに該当する。
「私はとても苦労したし、ある意味ではいまもそうだが、ひたすら働くことでそれを乗り越えることができた」と、シンハル氏は語る。「学習障害や発達障害への偏見は、以前とは比べ物にならないほど減った」。
状況が変わった要因として、学習障害を持った人々に関する研究がその神話を覆しただけでなく、オートノミーワークス(AutonomyWorks)やウルトラテスティング(Ultra Testing)といった、自閉症を抱える成人に適した仕事を斡旋する会社の企業努力がある。
たとえばウルトラテスティングは、 人間の(特に障害者の)脳の多様性を大事に考えている会社で、全社員の75%が自閉スペクトラム症を抱えている。社員は、ドローガ5(Droga5)やレイザーフィッシュ(Razorfish)、またビッグスペースシップ(Big Spaceship)など、広範囲にわたるエージェンシー向けに、ブラウザやWebサイト、そしてeコマースのプラットフォーム上で動作する新しいアプリのテストを行っている。ウルトラテスティングは雇用にあたり、自閉症を抱える人々に新たなスキルを教えるというよりは、彼らがすでに持っている能力を活用する方針をとっている。
またウルトラテスティングは、会社の使命を社外向けに宣伝する活動も行っている。最近ではエージェンシーのトライバル・ニューヨーク(Tribal New York)とパートナーシップを結び、「ディファレントベター」(DifferentBetter)というキャンペーンを立ち上げた。これは、自閉スペクトラム症を抱える人々がもつ才能、ユニークで価値のある能力やスキルセットにスポットを当てたものだ。自閉症啓発月間に合わせて立ち上げたこのキャンペーンは、人々の自閉症に対する考え方が「障害を抱えている」から「それに起因する能力に感謝する」ように変わっていくことを狙いとしている。