読み書き障害をもつ人が広告業界に多い理由 「脳内の配線が少し人と違うだけ」
シルバースタイン氏にとって、成功の鍵は物ごとを視覚的に考えることだった。正式な診断結果を受けたわけではないが、自身の能力はディスレクシアがもたらしたものであり、シルバースタイン氏が「言葉の使い方に優れている」と表現する、共同創設者兼パートナーのジェフ・グッドバイ氏との長年にわたる協働関係にも大きく寄与していると信じている。シルバーステイン氏は、これらの言葉を芸術的な表現に置き換える。
「私の頭のなかの配線は少し人とは違うだけだ。私が行うことのすべては直感的で視覚的だ」と、彼は語る。「私の脳は極端に視覚的で、瞬時にアイデアを視覚化できる」。
大きな障害だが、特定の強みを得るのに一役買っている
同様に、自閉スペクトラム症を抱える人々は、大きな障害を抱えているにもかかわらず、クリエイティブな問題に対してユニークな答えを思いつくタイプの人が非常に多い。DDB ニューヨーク(DDB New York)でクリエイティブテクノロジーオフィサーを務めるアレクザンダー・リア氏がまだ成長中なんだといったように、彼らは社会的には扱いにくいタイプかも知れないが、この病気はある特定の強みを得るのに一役買っている。たとえば、リア氏は、細部に対する鋭い目と、目の前の作業に対して脅威的な集中力を発揮する能力をもっていて、コーディングやプロトタイピングといった作業に役立っていると語る。
「私たちの不可思議な性質や構造のおかげで、人とは異なった方法で物事に集中することができる」と、30代で自閉症と診断されたリア氏は語る。「いま思えば、自閉症は私をテレビゲームやパソコンにのめり込ませ、いま私が進んでいるキャリアの道に導いてくれたのだ」。
アーノルド氏によると、昔ながらの教育の線形的な構造が、ディスレクシアを抱える人々をクリエイティブ方面に傾倒しやすくする要因だという。決められたカリキュラムを上手にこなせない者が芸術に引き寄せられるのは当然のことだ。これがアーノルド氏が、広告業界にディスレクシアや自閉症を抱える人が多いと感じる理由のひとつかもしれない。
「線形的なシステムは、非線形な人々を芸術面で秀でさせる」と、アーノルド氏は語る。「彼らは、型にハマったことを上手くこなすことが苦手なため、彼ら自身の得意分野を探すことを余儀なくされる」。
多くの会社重役が広告業界に身を置くことになったもっとも大きな要因は、おそらくその業界の特質にある。広告業界は、人とは異なる考え方や表現を求める傾向があり、これは直線的な考え方に従うことをしない人々にとって魅力的だと、自身もディスレクシアを持ち、サンフランシスコに拠点を置くクリエイティブショップ、ジャーショニー(Gershoni)の共同設立者兼クリエイティブディレクターを務めるジル・ジャーショニー氏は語る。