駐日大使候補「ウィリアム・ハガティ」の正体 日本で働いた経験を持つビジネスマンの手腕

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実際、駐日大使としてハガティ氏の名前が挙がったとき、コーカー上院議員だけでなく、同じくテネシー州選出のラマー・アレクサンダー上院議員もこの人事を手放しで称賛。「わが国でテネシー州ほど日本と親密な関係を築いている州はない。そして、ビル・ハガティ氏こそ、この関係構築を率いてきた人物だ。彼は日本で暮らし、そして働いただけでなく、わがテネシー州の経済コミッショナーとしても貢献してきた」。

ハガティ氏は現在、テネシーとシカゴに拠点を持つ、未公開株投資会社の業務執行取締役を務めている。駐日大使に指名されるまでは、2018年にテネシー州知事に立候補することも検討していた。また、仮にコーカー上院議員が国務長官に任命されていた場合、コーカー上院議員に代わって上院議員となることも視野に入れていたようだ。

トランプ政権でやっていることは?

ハガティ氏は当初、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事を支持していたが、風向きの変化を察知して、いち早くトランプ氏へ乗り換えていた。トランプ政権の政権移行チームでも重要な役割を果たしており、大統領指名の責任者を務めている。この中には、大統領が指名しなければならない政府職員5500人のうち、もっとも重要な指名候補者の身元調査という任務も含まれている。

就任すれば、米元大統領の娘である、キャロライン・ケネディ前駐日大使から任務を引き継ぐことになる。ケネディ氏はほとんど外交任務にかかわらない、象徴としての存在感が大きかっただけに、ハガティ氏がどんな役割を果たすのか気になるところである。

このほか、上院では近く、アイオワ州のテリー・ブランスタッド知事を駐中国大使として承認することが見込まれている。アイオワ大学の元総長を務めた経験も持ち、米史上最も長期間知事を務めたブランスタッド知事は、数週間前に上院外交委員会での公聴会を終えている。

北朝鮮問題がくすぶる中、ブランスタッド知事には長らく培ってきた政治的スキルを中国との関係構築に存分に発揮することが期待されている。もちろん、この手腕は経済問題でも役立つことになるだろう(なにせ、アイオワ州は中国への最大の農業製品輸出量を誇っているのだ)。

米国での政治的混乱に加えて、アジアでは北朝鮮や南シナ海問題などがくすぶる中の船出となるハガティ氏。ビジネスマンならではの交渉力を生かす場面は訪れるだろうか。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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