「座れる特急」での通勤は定着しているのか

小田急・西武はほぼ満席、東武新型特急は?

西武鉄道は、池袋線・西武秩父線と新宿線に有料特急「レッドアロー」を運行し、主に平日朝上りおよび夕方下りで多くの通勤利用がある。2015年度の特急乗車人員は833万人であった(西武鉄道『会社要覧2016』)。2016年7月2日に特急料金を改定し、池袋駅―所沢駅、池袋駅―飯能駅などの区間では値上げとなった。

特急料金改定について、狭山ヶ丘駅から千代田区まで通勤している50代の男性会社員は、週2~3回程度利用している池袋駅―所沢駅間の特急料金について「西武特急は、JR特急などと比べるとかなり安価で、400円は許容範囲だ」と言う。実際、ある平日に池袋18時00分発特急「むさし29号」飯能行き(列車番号:29)に乗車しようとした際、ホームでのキャンセル待ちで何とか特急券を確保することができた状況で、人気は相変わらずだった。

西武新宿線の特急「小江戸」(写真:HAYABUSA / PIXTA)

また、西武新宿18時00分発特急「小江戸29号」本川越行き(列車番号:129)7号車に乗車した際は、高田馬場駅からの大量乗車でほぼ満席となったが、東村山駅と所沢駅で合わせて7割前後が下車した。池袋線・新宿線とも、都心―所沢駅間の利用が多くを占め、所沢駅-飯能駅・西武秩父駅・本川越駅間では座席に余裕があるのが現状である。近畿日本鉄道などのように、特急料金の通算制度を導入し、両線の特急の乗換利用を認めれば利用促進につながるだろう。

通勤ライナーはまだ拡大の余地がある

最後に、首都圏私鉄の着席定員制列車と有料特急の現状分析と改善策について説明したい。平日通勤時間帯の着席定員制列車と有料特急では、小田急ロマンスカーと西武レッドアローは朝上り・夕方下りとも満席となることが多く、東武東上本線「TJライナー」の夕方下りもほぼ満席となる。

西武新宿線特急、東武本線特急、京成本線「イブニングライナー」の始発駅はJR線のターミナル駅から離れているため、JR線との接続駅に停車させることで乗車率を確保している現状がある。一方、小田急の千代田線直通特急は、都心の複数の主要駅に停車させることで都心のオフィス街に通う通勤利用を獲得している。

地下鉄直通の有料列車は、3月に運行を開始した西武「S-TRAIN」にも拡大した。東武経営計画でも、地下鉄直通特急の検討が明記された。沿線の魅力向上を図るためにも、地下鉄直通特急・ライナー列車の拡大が期待される。

特急料金の乗り継ぎ制度の創設、停車駅の追加、列車本数増加、そして運行区間拡大などにより、有料特急・ライナー列車の利便性を改善する余地は依然として大きい。消費者の声に耳を傾けることで、さらなるサービス向上へつなげてほしいものである。

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