白斑被害はカネボウだけの問題なのか 厚労省"お墨付き"、医薬部外品の大事故は2度目
また医薬部外品には、医薬品同様、発売後の市販後調査が義務づけられている。カネボウ化粧品の場合は2008年の9月から2年の間に、厚労省の指示である1000例を上回る1200例の利用者を追跡調査、安全性に問題がなかったと報告している。つまり、一応は国の基準を満たしながらも、その後、大規模な健康被害に発展してしまったのだ。
実は医薬部外品による大規模な健康被害は、今回が初めてではない。九州の化粧品メーカー、悠香が販売していた「茶のしずく石鹸」もその一つだ。2005~2011年に販売されていた同製品に含まれる加水分解小麦成分により、約2000人が小麦を摂取することに伴うアレルギーや、呼吸困難やショック症状など、特定の物質が原因でアレルギー反応を引き起こすアナフィラキシーを発症した。被害者が損害賠償を求めて悠香を訴えた裁判は、現在も継続中。この「茶のしずく石鹸」も、医薬部外品として厚労省に承認を受けて販売されていたものだった。
厚労省が「お墨付き」を与えた医薬部外品で、深刻な事故が連発した事実を冷静に受け止めれば、国の定める安全基準や審査体制にも何らかの問題がないのかどうかを、検証する必要はあるかもしれない。
これに関連して、「茶のしずく石鹸」の被害救済東京弁護団の事務局長も務める中村氏は、日本は「審査に必要なマンパワーが不足している」と指摘する。
日本と米国の審査人員は7倍の差
たとえば、医薬品・医薬部外品の承認審査を行うPMDAには、2012年4月時点で678人が在籍しているが、米国で同じ機能を担う食品医薬品局(FDA)の在籍人数は、2009年時点で4911人。年間の承認件数は、日本のPMDAが新薬で112件(2010年度)、米国FDAは新薬と生物学的製剤を併せても140件(2008年度)と、承認件数に大きな差がない。医療機器はそれぞれ約20件と同等だ。
予算規模は日本のPMDAが年間約108億円(2011年度)なのに対し、米FDAは約2956億円(2010年度、1ドル=90円換算)。各種の研究活動や健康食品の認証など、米FDAのほうが業務範囲は広いものの、日本は国際的に見て十分な審査体制を構築しているとは言い難い。
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