コミーFBI長官「電撃解任」にウラはあるのか

「第2のウォーターゲート事件」との説も

もしコミー氏が「捜査対象ではない」と語っていたとすれば、コミー氏は司法内規違反を犯していることになる。そのことは、ある意味では、コミー長官の仕事ぶりが、信頼がおけないのではないかという角度からの、トランプ大統領の一種の「おとり捜査」と見ることも、米国法論理的には可能だろう。トランプ氏はそこまで読んだうえで3度確認を取った、といえる。

3度確認を取ることによって、自らは捜査対象外であり、ロシアとの癒着疑惑とは無関係だと確信したうえで、客観的な理由によってコミー長官を解任したことになる。それはアメリカ国民の利益になるという判断からだ。

トランプ大統領は、ぺらぺらとしゃべりすぎて、それが嫌われて議会から追放されるという報道が米メディアには多いが、トランプ氏は法律に無知どころか、熟知したうえで大胆な行動に出ている。いわば、「肉を斬(き)らせて骨を断つ」覚悟で、事態の打開、解決に臨んでいる。

政治的ダメージを打ち消す神通力

ニクソン元大統領は、弾劾の可能性あり、というところで自ら辞任した。これに対して、前代未聞の不倫スキャンダルで弾劾を追及されたビル・クリントン元大統領は、弾劾寸前まで裁判を争った。ビル・クリントン元大統領の側に立っていた筆者の見るところ、それこそ首の皮一枚でつながった格好だったが、いまだに隠然たる政治力を維持している。

クリントン氏をぎりぎりまで追い詰めたのは、ケネス・スター特別検察官の存在が見逃せない。今回も民主党は特別検察官の選任を議会に要請する構えだ。それには議会が大きな力を持つ。特別検察官が選任される可能性は、今後ともありうるし、選任されても驚くには当たらない。

仮に特別検察官が選任されて捜査が始まることになれば、トランプ政権の政治的ダメージは、ある程度、大きい。しかし、クリントン氏が追い詰められたような状況と比較すれば、法的なテクニックから見て、現状ではずっと軽いと筆者は見ている。

政治的ダメージは確かに大きいが、2020年の大統領選挙の年に向けては、それを打ち消すような神通力が発揮される可能性がある。何より、いま緊迫状況にある北朝鮮問題をどう解決するか、その打開に向けた中国首脳との緊密な関係を維持する必要がある米国にとって、トランプ氏の力量は欠かせない。

中国の習近平国家主席は、トランプ氏の政治的にも、軍事的にも、その予測不可能な神通力の発揮を目の当たりにしたはずだ。特に果敢なシリア攻撃命令を目撃し、その決断力、指導力について、アメリカ国民の過半数が評価している事実を理解しているに違いない。

もし北朝鮮が核実験を再開するような事態になれば、米軍の先制攻撃さえも、状況によってありうることを察知しただろう。そのことは北朝鮮にも伝えられているはずだ。

トランプ大統領の内政上の難問は、日本やアジア諸国にとっても、ひとときも目を離せない。それは、中国や北朝鮮情勢にも、間接的な影響を及ぼさざるをえない、といえる。

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