「折れない」シャープペンはこうして生まれた 5年をかけ開発、ゼブラ「デルガード」がヒット

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ゼブラでデルガードの開発がスタートしたのは2009年のことだ。新しい機能を持ったシャープペンの開発にあたって、「折れない」機能を持たせると、コンセプトはすぐに決まった。

もっとも、折れ「にくい」シャープペンは他社ですでに発売されていた。強い力がかかることで、芯が引っ込む機構を採用したシャープペンだ。ただ「垂直の力に対しては有効だが、書くときは斜め。必要なのは角度がついた状態で折れないようにすることだ」とゼブラの月岡之博・研究開発部主任研究員は話す。

折れないというコンセプトは明快だったが、実現はたやすいものではなかった。そもそも筆記中の芯折れを防ぐ妙案が浮かばない。「どうしてもすでにある、引っ込める技術が頭から離れない。どうやって芯を引っ込めるかということばかり考えていた」と月岡氏は振り返る。機構案が出ないまま、いったん別の商品開発に着手して、折れないシャープペン構想を中断した時期もあった。

着手からすでに3年が経過していたあるとき、ふっと出てきたアイデアが「カバーで芯を覆う」という案だった。

「カバー」の調整に半年かかった

強い筆圧がかかったときだけカバーが降りる仕組みを持つ(写真:ゼブラ提供)

ただ、普通の筆圧で書いているときでもカバーをしてしまっては、書き味が悪い。通常は収納されていて、過度な筆圧がかかったときだけカバーが降りて覆う機構が必要だった。

ペン先で芯を支えているスライダーと呼ばれる部品にカバーの役割を持たせる。そのスライダーに傾斜をつけて、ペン先から飛び出るように設計する。そこにスプリング(バネ)をつけて、一定以上の筆圧がかかればスプリングが伸びてスライダーが滑り降りるーー。機構の構想は定まった。

難航を極めたのはスライダーとスプリングの調整だった。スライダーが滑り降りるための傾斜の角度を何度にするか、スライダーの表面をどう加工すると滑りがよいか、材質は何がいいか…、などを考え抜き、試作に試作を重ねた。スプリングも2つ入れ込み、100パターンに及ぶ組み合わせを一つ一つ検証した。プロトタイプが完成したのは、機構が固まってから半年が経過していた。

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