イギリスでBrexitの原動力となったのも、フランスで極右の大統領候補の躍進を招いたのも、ドナルド・トランプ氏をアメリカの大統領にまで押し上げたのも、民衆の不満と怒りだった。その象徴のように、ささいなことで激怒し、吠(ほ)えまくるトランプ大統領。その大人げない感情的な対応に、反対派の反感と嫌悪はさらに増幅し、支持派との間の軋轢が高まっている。
フェイスブックなどでの書き込みを見ていると、お互いが相手を愚弄し、攻撃し、「怒りの物々交換」をしているかのようなやり取りが続いている。あの「寛容」な国ははたしてどこへ行ったのだろうか。
アメリカン航空の乗務員もブチ切れ
そんな「非寛容」な空気が広がる中で起こったのが、前回記事で紹介したユナイテッド航空の乗客引きずり出し事件だった。人々は航空会社の非人間的な対応に大いに義憤に駆られたわけだが、4月21日にも、アメリカン航空の乗務員が乗客に対し「ブチ切れ」て、大問題となった。その様子はこちらの動画で見られるが、そもそもは、乳児を抱えた母親がベビーカーを機内に持ち込み、それを乗務員が取り上げたのが発端だった。
その際に、ベビーカーが子供に当たりそうになった、と母親は泣いて抗議。ほかの男性乗客が母親を擁護する形で乗務員と口論になり、カッとなった乗務員が「かかわるな。(俺を殴れるものなら)殴ってみろ」といった趣旨の言葉を投げつけ、キレたのだ。そもそも、ベビーカーは機内に持ち込めず、搭乗前に預けることになっており、どういった経緯で乗務員が取り上げたのかは不明だ。
しかし、けんか腰の乗務員の動画はソーシャルメディア上に拡散し、アメリカン航空は即刻、謝罪を余儀なくされた。乳児を抱えて泣く女性と、声を荒げ、けんかを買う乗務員ではどう見ても分が悪い。乗務員のここまで憮然とした表情や客につかみかかろうとする姿など、日本の航空サービスではありえない光景だ。
そもそも、「アメリカの航空業はホスピタリティ産業ではなく、単なる運輸業だ」。アメリカのホテルの関係者が先日、そんな話をしていた。確かに、考えてみればバスや電車と同じ業種だが、なぜか、「おもてなし」まで求めてしまうのは日本人ぐらいなのだろうか。丁寧で腰の低いサービスなどはアメリカの航空会社に求めるべくもないのだが、それにしても、このブチ切れぶりはまずかった。
4月3日の今村雅弘復興担当相(当時)の記者会見も、まさに「ブチ切れ」ていた。記者からどのような質問を受けても、主導権を取り、自分のペースで冷静に受け答えしなければならないのだが、この基本動作がなっていなかった。
むろん今村大臣が事実上の更迭となった理由は「キレた」からではない。言うまでもなく、復興担当相という立場にあるまじき発言を行ったためだ。由々しきことではあるが、世界では米国のドナルド・トランプ大統領やフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領のような「キレキャラ」リーダーが増えていることも事実である。国のトップが民衆の「怒り」を刺激し、扇動することに違和感のない時代なのだ。
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