中国の”縄張り争い”に、多国籍企業が困惑 人民元の自由化などめぐる争い
[上海 5日 ロイター] - 中国で人民元や資本勘定の自由化をめぐる中国人民銀行(中央銀行)と国家外為管理局(SAFE)の縄張り争いが活発化しており、中国に拠点を構える多国籍企業はどちらの側につくか決断を迫られている。
習近平国家主席と李克強首相が改革姿勢を強める中、重要な改革分野をめぐって当局同士が反目し合っていることは決して望ましくない。
中国と深い貿易関係にある企業や海外のビジネス団体といった関係者らによると、自由化をめぐる試行プログラムをいくつも所管している2大当局間のあつれきを受け、中国で投資や貿易に携わる主要企業の意思決定に影響を与え始めているという。
欧州系多国籍企業の財務担当者は「試行プログラムはSAFEのもの、人民銀行のもの、それぞれがいくつもあるが、両者は互いにいがみ合っている。もし一方と契約を交わせば、もう一方からはつまはじきにされるかもしれない。そのため、どれを選択するのか、誰に何を言うのか、非常に気をつけなければならない」と話す。
その他4人の関係筋も人民銀行とSAFE間のいがみ合いに注意するよう忠告を受けたという。両社の仲の悪さは、中国や香港の金融界の一部では公然の秘密となっているもようだ。
試行プログラムの事情に詳しい多国籍企業の財務幹部は「われわれが受けたアドバイスは、人民銀行とSAFEはお互いに競っているため、どの試行プログラムにも参加するべきということだった」と語る。
いずれの関係者も中国でのビジネスに影響するとして、匿名を希望した。
SAFEと人民銀行の双方にファックスでコメントを求めたが、回答はなかった。
争いの原因
中国人民銀行とSAFEのいがみ合いがどのようにして始まったのかは定かではない。アナリストの中には、単純に権力をめぐるいさかいが原因だという見方もあれば、政策課題をめぐる意見の相違が原因だという見方もある。
中国にある海外ビジネス団体のある幹部は「人民銀行は(改革に対して)よりオープンなアプローチをとる一方、SAFEは自身をゲートキーパー(門番)とみなしている」との認識を示した。
人民銀行は国内のマネーサプライを管理し、中国の銀行に対する権限を中国銀行業監督管理委員会(銀監会、CBRC)とともに握っている。
一方、SAFEは中国の外貨準備を扱うほか、クロスボーダーの通貨の流れを管理している。
機構的には人民銀行がSAFEを管理することになっているが、アナリストらによると、実際には反目し合うことも多いという。