中国の”縄張り争い”に、多国籍企業が困惑 人民元の自由化などめぐる争い

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さまざまな試行プログラム

ここ数年の急激な経済成長を受け、中国指導部は財政や金融、司法といった面における幅広い改革が将来の成長のためには必要だと指摘している。今年10月には、一段の経済改革に向けたロードマップを示すとみられている。

中国は資本勘定や人民元相場に厳しい規制を敷いているものの、現時点で通貨や資本勘定に関連した10件超の試行プログラムが実行中、もしくは実行される予定となっており、対外直接投資やクロスボーダー融資の容認などさまざまな面における自由化が検討段階にある。

試行プログラムに参加している多国籍企業には、英蘭系メジャー(国際石油資本)のロイヤル・ダッチ・シェル、韓国のサムスン電子<005930.KS>、英銀大手スタンダード・チャータード(スタンチャート)、米半導体大手インテルなどが含まれている。

香港におけるオフショア人民元市場は試行プログラムの成功例だ。

進まない改革

シティ中国の財務・貿易ソリューション部門責任者、Pei Yigen氏は、中国人民銀行とSAFEの関係はそれほど大きな問題ではないと指摘。試行プログラムの範囲が異なり、企業は最も適したものを選べばいいと語る。

同氏は「原資が限られていることを考慮すれば、現時点で1つの試行プログラムに集中するほうが企業にとって理にかなっている」と述べた。

JPモルガン(香港)の中国担当チーフエコノミスト、朱海斌氏は、より重要なのは中国政府の改革姿勢だと指摘する。

同氏は「私の懸念は、何度も改革と聞いているのに、依然として(中国政府の)具体的な行動を待っていることだ」と話す。

懸念を抱くエコノミストらは、中国が資本勘定の開放を1993年から約束しているのに、一向に進んでいないことに言及している。

試行プログラムの実施地域をめぐっても疑問の声が上がる。

前出の財務幹部は「構える拠点の違いによって、扱いが異なるのはやや不満を感じる」と話す。

独立系のエコノミスト、アンディー・シエ氏は「中国人は2000年もの間、官僚主義的なやり方に慣れ親しんでいる」と述べ、試行プロジェクト方式は時代遅れだと批判。「中国全体にわたって適用することで意味のあるものになる」と述べた。

一方、同氏は、最も重要なのは、官僚機構における改革派間の争いではなく、改革派と既得権益層との争いだと指摘。そうした争いによって、中国の経済改革派は主要な利害関係者の気をそらしているだけでなく、いかなる改革も望まない層にも安心感を与えている、との認識を示す。

同氏は「中国を変える唯一の方法はダムを開き、マネーの流出を認めることだ」と述べた。

(Pete Sweeney記者、執筆協力 Saikat Chatterjee in HONG KONG, Koh Guiqing in BEIJING and the Shanghai Newsroom;翻訳 川上健一;編集 宮崎亜巳)

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