仏大統領選、実は「極右vs既存政党」ではない マクロンは19世紀のティエールに似ている

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きわめて冷静で、きわめて計算高いMoDem(民主運動党)党委員長で、ピレネー山脈の麓の市長フランソワ・バイルーは、2月初めにマクロンに接近して共闘を呼びかけ、それに成功した。

常に大統領選に出馬していたバイルーが今回大統領選に出なかったというのはしたたかな戦略だ。サルコジ、オランド、フィヨンなど旧い亡霊の時代が終わったことを直感的に知ったバイルーは、マクロンに託すことで自らの選挙を闘うことにしたのだ。それは共和党のドミニク・ド・ヴィルパンにもいえる。とうの昔に、お役御免となっていたこの亡霊も、マクロン支持を打ち出したのだ。

その動きは止まらない。実際、サルコジ元大統領自身がマクロンに乗り換えたのだから。1月にフィヨンが妻の秘書給与問題で人気を落としたとき、そもそもこのニュース・ソースで暴露記事を書いた『カナール・アンシェネ』に渡したのはサルコジではないか、という噂があったからである。サルコジならば、やりそうに見えても仕方がない。すでに選挙直前にはマクロンに乗り換え、次の議会選挙(6月)での勝利を考えようとしていたからである。

大統領になっても議会の支持が必要

まぬけなのはフィヨンかもしれない。各地で卵を投げつけられながら、最後まで選挙を闘い通したこの男に似合うのは、一徹だがやはり二番手の男というイメージである。共和党がUMP(人民運動連合)といわれた時代、党の委員長を狙って出馬し、フランソワ・コペに僅差で2位甘んじた。その後、投票の数えまちがいだと選挙無効を訴えたが、やはり結果は変わることはなかった。結局、負け犬のイメージがついただけであった。

マクロンが勝とうと、ルペンが勝とうと、議会勢力の支持がなければ、政権の運営は不可能である。確かに、個人投票となる大統領選では、既存政党以外の候補が大統領になることはありえても、議会に党の基盤をもたない大統領は張子の虎だ。

まさにこのことを歴史的にも証明して見せたのが、第二共和制の大統領ルイ・ナポレオンだ。議会勢力の反対にとことん追い詰められた大統領は、議会選挙の有権者の資格を一般市民にまで広げ、議員に揺さぶりをかけ、人民勢力による議員の追い落としを図る。怒った議会をクーデターという手法を使って”料理”し、以後、大統領から皇帝へと上昇するのである。ルペンが勝てばおそらく行政は機能停止し、結局はクーデターのような荒手に出るしかないだろう。

ということは、同じく議会に勢力をもたないマクロンも当選後、議会対策をするしかないということである。それを知っているサルコジは、共和党と社会党を包括する大政党を模索するかもしれない。

同じことはオランドも考えているだろう。これこそ、マクロンが自らの著書『革命』(XO Editeurs,2017)で、述べていることである。既存の共和党と社会党をなくし、新しい党をつくるというのだ。

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