雅叙園「猫アート展」が猫好きを魅了するワケ 東京都有形文化財の「百段階段」が会場に
実際には99段の階段で結ばれる7つの座敷は、天井、欄間(らんま)などに豪華けんらんな装飾がほどこされている。元は料亭として作られた建物で、各部屋を飾る日本画は、創業者によって招かれた鏑木清方などの昭和を代表する著名作家が技を競ったもの。この建物そのものに歴史的、芸術的に高い価値があり、2008年に東京都の有形文化財に指定されている。
そこで、9人の現代作家たちによる“猫千態”が彩り豊かに繰り広げられているのだ。
企画に携わったホテル雅叙園東京でイベント部門のマネジャーを務める芳賀尚賢氏は企画の意図について次のように語る。
「これまでも百段階段でのイベントを行ってきましたが、生け花や歌舞伎など日本文化をテーマとしたものが多く、猫をテーマとしたのは自社主催としては今回が初めてです。ですが、この建物の装飾をよく見ると、野菜であったり、“末広がり”の扇であったりと、日本人にわかりやすくなじみ深いものをモチーフに使っています。今回は現代の作家の皆さまに猫の作品を添えていただきました。それに、猫は和室に非常によくなじむ生き物だと思います」(芳賀氏)
また、かつてこの建物では当時の著名作家たちが技を競い、またお互いに影響を与え合ったが、今回の展示会に協力した現代の作家たちにも同じことが言えるそうだ。
さまざまなアーティストの作品が展示
さらに、今回はアーティストのジャンルやキャリア、背景などもさまざまだ。たとえば、ひねりジャンプをする猫の、躍動感あふれる写真を展示しているのはアクセント氏。写真歴3年で、ツイッターの投稿から一躍話題になった。かつ、「サラリーマンなので顔出しはNG」と、記者内覧会ではお面を被っての登場となった。
366日分の「誕生日猫」と「神仏猫百覧会」などを出展するもりわじん氏は、猫を神仏像にした猫アートの先駆者で、活動歴約30年。ちなみに「神仏猫百覧会」とは、薬師如来ならぬ「毒猫神」を中心に、猫型の神や仏を99体並べたものだ。立体の曼陀羅(まんだら)といったところだろうか。長野県のあるお寺に、この毒猫神と対になる「薬猫神」が納められているという。彫刻家のはしもとみお氏は、阪神淡路大震災を機に、命の大切さを再確認し、芸術家を目指すようになったという背景をもつ。
このようにさまざまな作家の作品をひとつの展示会で楽しめるのが、今回のイベントの大きな特徴である。さらにあといくつか、過去の百段階段企画では味わえなかった魅力がある。ひとつは、これまで開かずの間とされていた頂上の部屋を開放したことだ。外光の入る明るい部屋には、前述のはしもとみお氏や、現代の、まさに“浮世絵”を描く石黒亜矢子氏の作品が展示されている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら