小泉進次郎氏が「こども保険」を強く推す理由 教育無償化はどのように実現するべきか

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――高等教育無償化の議論では、「大学の質」という重要な議論が置き去りになっていますね。

小泉:私の個人的な思いだが、どうせ無償化するなら海外留学を無償化すべきだと思う。理由は5つある。

まず、日本にいたら日本のことはわからないと実体験を含めて思う。次にこれからの日本に必要なのは多様性だが、多様性とは何かは自分が外国人になってみて初めてわかる。3つ目は最低限の語学力。いま農業の政策に当たっているが、外国語の定着率が低いゆえに日本の失っているビジネスチャンスや思考回路はすごく大きい。4つ目は外国の大学・大学院を国費で無償化したら、国内の大学が焦る。うかうかしていたら外に行っちゃうぞと、大学改革に火がつくだろう。最後に、所得が低くてもチャンスがあれば外国で学びたいという人たちに無償化があれば、所得格差が教育格差を固定しないことにもつながる。学生だけでなく、いったん就職した人が海外で学ぶ場合も後押しするくらいでいい。

村井:極論的にいうと、私は高等教育改革はやっても仕方ないと思っている。若者は非常に合理的に動いている。なぜ大学までは一所懸命勉強して、入学したら勉強しないのかといえば、ほとんどの企業が採用に当たって大学名で学生を選ぶからだ。今の雇用制度が変わらないかぎりは、大学がどんな教育をしたとしても若者は同じ行動を取り続けると思う。

だとすると、高等教育改革が本当に実現するときは、兼業・副業の解禁や労働市場に厚みを持たせるなど働き方改革をしていく中で、大企業が本当の能力主義による採用と給料体系を取り入れ始め、若者もすぐ使える人材として大学を卒業しないと切られるな、という感覚を持ったときだ。まずやるべきは働き方改革、労働市場の改革だろう。

社会保険制度はデジタル社会に必要

小林:私の前職はNTTドコモ人事部の採用担当だが、その経験も踏まえると評価の問題だと思う。大学での勉強をうまく評価できなかったから、何々大学の何々学部が優秀だ、となっていた。技術の進化によって今後は、デジタルに物事が見えるようになり、どの大学でどの先生から何を学んだかが明確になっていく。企業が大学での勉強を評価できるようになれば、大学の質の向上につながる。

一方で、社会保険制度はデジタル社会に必要な概念だと思っている。なぜかというと、デジタル時代になると自分がどのような病気になるかが遺伝子情報などでわかるようになる。そうすると、自分はこの病気になる確率は低いのになぜ医療保険料や介護保険料を払わなければいけないのかということになる。「それでもみんなで共助の仕組みでやっていくんだよね」という感覚がないと、すごく殺伐とした社会になっていく。私と小泉議員は結婚していないが(笑)、代わりにたくさん子どもを育てている人たちをわれわれはサポートできるのではないか、それが「こども保険」ではないかという感覚が個人的にはある。

小泉:今の小林議員の話は、すごく大事。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を含め、今後は手のひらでできることが増え、無人化が加速する。社会のつながりや地域の絆などを考える仕組みをもう少し考えておかないといけない。個人の力を高めるという意味での個人主義は大事だと思うが、それは自分のことだけを考えればよいというものではない。今後の時代の変化や技術革新が社会に与えるプラスの影響を享受しながら、マイナスの影響もカバーしていくための社会設計が必要だ。「こども保険」はそこも見据えている。

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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