トランプを支持する「負け犬白人」たちの正体 黒人・ラテン系移民より将来に絶望している
私はイェール大学のロースクールに入学する前の夏、大学のあるコネチカット州ニューヘイブンに引っ越す費用を工面するために、仕事を探していた。すると、床タイルを扱う中規模の会社を経営する地元の知り合いが、うちで働かないかと誘ってくれた。
床タイルは驚くほど重い。1枚で1.5キログラムから3キログラム近くもの重さがあり、8枚から12枚のタイルが1つの箱に梱包されている。私の仕事は、輸送用のパレットにタイルを載せ、出荷の準備をすること。簡単な仕事とはいえないが、とにかく稼がなければならない私にとって、時給13ドルは魅力的だった。すぐに心を決め、時間外シフトをできるだけ増やしてもらい、可能なかぎり長時間働くことにした。
10人ほどの作業員がいて、多くはそこで何年も働いていた。そのひとり、飛行機のパイロットを夢見る青年は、このタイル会社以外でも、フルタイムの仕事に就いていた。時給13ドルなら、独り身の青年が地方の町(それなりのアパートが500ドルで借りられる)で暮らすには、十分な稼ぎになる。
しかも、この会社では定期的に昇給がある。景気が低迷するなかでも、ここで何年か働き続ければ、少なくとも時給16ドルは稼げるようになる。年収にして3万2000ドル、つまり、1家族が最低限度の生活を維持できる収入を得られるのである。
仕事はあるのに、勤勉に働かない人々
ところがその会社は、比較的安定した賃金を約束していたにもかかわらず、倉庫係として長期で働いてくれる人材を確保できないでいた。私が辞めるときには、ほかにも3人の青年が倉庫係として働いていたが、26歳の私が飛び抜けて年長だった。
ある作業員(ここでは仮にボブと呼ぶ)は、私より数カ月早く倉庫係として採用されていた。19歳のボブには妊娠中のガールフレンドがいた。上司は親切にも、ボブのガールフレンドを事務員として迎え入れ、電話の応対を任せることにした。
ところが、ボブとガールフレンドは、まったくひどい働き手だった。ガールフレンドのほうは、3日に1度の割合で無断欠勤。「休むときは事前に連絡するように」と繰り返し注意され、数カ月で辞めていった。
ボブも欠勤の常習者で、1週間に1度は姿を見せない。しかも、いつも遅刻ばかり。そのうえ、1日に3回も4回もトイレにこもり、一度こもると30分は戻らない。その態度があまりに目に余ったので、もうひとりの作業員と私は、よくからかっていた。ボブがトイレに向かうと、ストップウォッチをセットし、経過時間を確認しては「35分!」「45分!」「1時間!」と、倉庫じゅうに響く声で叫んだのである。
結局、ボブも解雇されることになった。それを知ったボブは、上司の元に走り、「クビだって? おなかの大きいガールフレンドがいると知っているのに?」と詰め寄った。
だが、辞めていくのはボブだけではなかった。私が働いていた短い期間に、少なくともさらに2人(そのうちの1人はボブのいとこ)が、辞めさせられるか、自分から辞めていった。
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