「気性の荒い独裁者」を見くびってはならない 米攻撃が全面戦争につながるリスクは多大だ
北朝鮮はかつて孤立して窮地に陥った際には、日米韓の連携を断つ「分断外交」をしばしば展開した。今回は、内政が不安定の韓国をターゲットに4カ国の連携を分断させるようとする動きのほか、ロシアへの接近を誇示して、中国の圧力に屈しない「振り子外交」を展開するとみている。
北朝鮮をめぐる緊張が高まる中、日本の論壇では、米国が北朝鮮の核施設を対象にサージカルアタック(局部攻撃)といった限定的な先制攻撃をしても、北朝鮮が報復攻撃をしなかったり、できる限り全面戦争を避けたりするとの見方がある。
子供の頃から負けん気が人一倍強い
筆者はこの見方は極めて楽観的で、危険だとみている。核ミサイル開発は北の独裁体制維持に不可欠であることに加え、米国に対する最大の抑止力になっている。それが破壊されれば北の金王朝体制の崩壊を意味する。そのような状況で、金正恩氏はやすやすと尻込みをするだろうか。
また、金正恩氏は子供の頃から、負けん気が人一倍強く、気性が激しいことがわかっている。米国が脅せば脅すほど、挑発をエスカレートさせるタイプだ。一筋縄ではなかなかいかない人物だ。金正恩という人間が理解されていないがために、「米国が先に手を出しても、北朝鮮は必要最低限の反撃にとどめようとするだろう」といった甘い見方が根強いとみている。
故金正日総書記の専属料理人を計13年務めた藤本健二氏は、これまでに金正恩という人間を理解できるエピソードをいくつも、書籍や筆者との取材の中で述べている。
藤本氏は、金正恩氏が7歳から18歳になるまで遊び相手として一緒に長い時間を過ごしてきた。金正恩氏に実際に会った唯一の日本人だ。ここで改めて34歳になる北の独裁者、金正恩氏が何者かを理解してもらうために、藤本氏が挙げたエピソードのいくつかを紹介したい。
1990年1月、藤本氏は北朝鮮南西部の信川招待所で、当時7歳の金正恩氏と初めて会った。藤本氏は当時40歳を超えている。初対面の挨拶のときに、金正恩氏は藤本氏をにらみつけ、握手をしばらく拒否。「こいつが憎き日本帝国の輩か」といったような鋭い視線で四十男の藤本氏を睨んでいたという。
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