新聞の世論調査は中立な「報道」とはいえない

「共謀罪」「テロ等準備罪」? 誘導は明らかだ

これに対し朝日新聞の質問文は「政府は、犯罪を実行しなくても計画の段階で処罰する『共謀罪』の趣旨を盛り込んだ、組織的犯罪処罰法の改正案の成立を目指しています」と否定的に説明している。朝日新聞の場合、2月の調査では「政府は、過去3度廃案になった『共謀罪』の法案の内容を改め、組織的な犯罪について、準備の段階から取り締まる『テロ等準備罪』を設ける法案を、今の国会に提出する方針です」という表現で質問していた。読売新聞に近い表現の部分もあり、結果も「賛成」44%、「反対」25%と読売新聞に近い。これに対し4月の調査では「『共謀罪』の趣旨を盛り込んだ、組織的犯罪処罰法の改正案」という表現に変更し、「テロ」という言葉は消えた。法案についての表記の変更が解答に大きく影響したことは明らかである。

毎日新聞は「政府は、組織的犯罪集団が犯罪を計画した段階で処罰する法案を今の国会に提出する方針です。対象になる犯罪を当初予定していた700弱から半分以下に減らしましたが、一般の人も捜査対象になるとの指摘があります」と紹介している。毎日新聞は客観的な情報を多く盛り込んでいるが否定的な要素も加えている。そして「テロ」という言葉は使っていない。

政府は2月に法案に「テロ」の文言を追加

実は、質問の中に「テロ」という言葉があるかないかも大きな意味を持っている。

今回の法案は2003年以降、繰り返し国会に提出され3回廃案になった歴史がある。実際に行動を起こさなくても、犯罪行為を話し合っただけで罰せられる「共謀罪」の導入が柱だったことから野党などの強い反発があった。そこで政府は今年2月、罪名や条文に「テロリズム集団」という文言を追加し、テロ対策に力点を置いた説明を繰り返している。

産経新聞と読売新聞は「テロ等準備罪」などという表現で、政府同様テロ対策を強調している。これに対し朝日新聞や毎日新聞は「テロ」という言葉を使わず、朝日新聞は廃案になった法案でよく使われた「共謀罪」という表現を使っている。

質問が法案に肯定的な表現をすれば回答も「賛成」が増え、否定的な表現で紹介すれば「反対」が増える。また、主要国で過激派によるテロが相次いでいることからすれば、「テロ対策」に積極的に反対する理由はない。質問に「テロ」という言葉を使えば賛成が増えると考えるのは当然のことだ。世論調査結果の数字とはしょせんその程度のものでしかないのである。

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