国家債務の問題で預金封鎖など大混乱に見舞われたギリシャとキプロスの人々がEUに対して懐疑的なのはわかるが、昨年の国民投票でEU離脱を決めた英国民に次いでフランス人がEUに対して悲観的であることは注目に値する。これを踏まえれば、ルペン氏の「EU離脱を判断する国民投票を行う」との政策は、国民にとって響きの良いものかもしれない。
さらに、選挙直前になって極左のメランション候補が急速に支持を伸ばしているのも気がかりだ。メランション氏は極左であり、極右のルペン氏とは対極にあるが、ルペン氏と同様にEU懐疑派であり、低所得者層への厚い補助、移民の制限など多くの政策では、ルペン氏と似通っているため、やはり不満を抱える層から厚い支持を得る可能性が大きい。
仮に、中道派のマクロン氏ではなく、ルペン氏やメランション氏が躍進するなどフランス大統領選の結果が混乱を招くものとなれば、ユーロは対ドル、対円で一時的に下落するだろう。ただ、上述したように、昨年の英国民投票などの経験則からかオプション市場では既にユーロ下落への備えはかなり進んでいる。したがって、ユーロの下落はさほど深くならない可能性が高いのではないか。
北朝鮮問題が深刻化すれば円高になる
一方、ドル円についても、フランス大統領選による影響は一時的だろう。2016年6月の英国民投票では、英国のEU離脱が決まった直後にはドル円が一時100円ちょうどを割り込む事態となったが、その後振幅を伴いながら11月には米利上げ観測から再びドル円は上昇に転じ、12月には118円台の高値を付けた。今回も波乱の結果となった場合には、不透明感から一時的に「リスク回避の円高」となる可能性はあるものの、6月のフランス議会選挙で、国民戦線や左翼党が議会の過半数の議席を取得する可能性は極めて低く、EU離脱は現実的でないことを踏まえれば、結局は円相場への影響は一時的なものにとどまるとみている。
なお、地政学リスクについては、前述したとおり市場ではまだ緊張感がさほど高まってはいないが、経験則からいうと、リスクが本格化し、実際に戦争が勃発する事態となった場合は、実効レートベースでみれば、ドルがさまざまな通貨に対して最も買われやすい。一般的に「有事のドル買い」といわれるのもこのためだ。一方、同時に円も買われるため、ドルと円は綱引きとなるものの、北朝鮮問題に関していえば、どちらかといえば円のほうに軍配が上がるのではないか。
「北朝鮮の場合は日本に近いため、むしろ資本の流出が起きて円が売られるのでは?」との見方もあるが、極端なリスク回避となった場合には、本邦投資家が海外資産を売って日本に資金を戻し、現金化する動きが起きやすい。東日本大震災の時も、日本で起きた災害にも関わらず大幅に円高が進んだように、むしろ円に上昇圧力がかかる傾向がある。目先はフランス大統領選が最大の関心事となり、これを無事に通過すればドル円も反転上昇するとみているが、仮に北朝鮮問題が深刻化した際には、ドル円は円安ではなく、円高が進行する可能性に留意したい。
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