新入社員は「石の上にも3年」を真に受けるな 会社人事に「絶対服従」する人が大損する理由

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しかし、時代は変わり、バブル崩壊、リーマンショックなどを経て、大企業でもつねにリストラの話題が出ています。会社としては、すべての従業員について時間をかけて、行き届いたキャリア形成をする余裕はまったくなくなりました。会社に勤めていれば、望まぬ配転や職種転換の命令をされることも多くあるでしょう。意に沿わぬ人事に耐えるのは代わりに得るものがあるからです。つまり、会社がキャリア形成の責任を負っており、定年までその人の仕事と生活について責任を持つからこそ、耐える意味があったのです。

ところが現代では大企業でもリストラが常態化し、不採算部門は閉鎖されたり売却されたりするなど、素直に会社の指示に従っていたとしても定年までの雇用保障は確実ではないので、その前提が崩れています。それにもかかわらず、法律や裁判所の考え方は従来の考え方、つまり、「基本的に定年まで企業は雇用保障をすべき」という考え方ですので、解雇については厳しく判断する代わりに、配置転換・転勤などについては広く認める傾向があります。そうなると、「自分のキャリアは自分で築く」という視点が、必要不可欠なものであることがおわかりいただけるでしょう。

「石の上にも3年」はやはり間違いだ

よく、新卒採用後に辞めたいと言っている人に対して「石の上にも3年」と言う方もいますが、これは間違っていると思います。特に、ハラスメントや極度の長時間労働、いじめなどがある場合、その会社に居続けることを選択する必要はもはやありません。3年程度で離職してしまうと、その後の転職に不利になるという考えもありますが、このような考え方の根底にあるのは、1つの会社で定年まで働き続けることがすばらしいという過去の価値観です。

かつての就職氷河期と異なり、今は圧倒的な人手不足で、第二新卒の転職は圧倒的な売り手市場です。レールから1度外れたら終わりだという考え方は、古いものになっているといっていいでしょう。仕事はやってみないとわかりません。思わぬ仕事が自分の天職になることもあります。

筆者としても、何の考えもなしに辞めろと言うつもりはありません。しかし、「いつでも辞めて構わない」という姿勢で働いているのか、「会社にしがみついている」のかでは毎日の過ごし方に大きな差があるという点が重要なのです。ポイントは、「嫌になったらすぐに辞めろ」ということではなく、自分のキャリアというものを意識して、異動希望や担当業務をつねに考える姿勢を持つことです。

実際に転職して初めて自分の適職がわかることもあります。まずは自社でのキャリアを考え、どうしても自社ではそのキャリア形成が実現できないと判断したら転職も選択肢の1つとしましょう。単に職を転々とすればよいわけではなく、好きなことを見つけたら、覚悟を決めて10年頑張るとよいと思います。

また、視野を狭めてしまうと、発想の幅も狭まりますし、「会社にしがみつく」という考えになりがちですから、社外での交流も重要になります。業界もまったく異なる人が集まるイベント、サークルなど「○○株式会社の○○部」という肩書を捨てて、「裸の自分」として交流できる場所は重要であると筆者自身の体験からも痛感します。見識も広がりますし、さまざまな視点を得ることができ、また社内でストレスがある場合にも発散の場となります。このような自宅でも会社でもない、サードプレースをつくることを意識し、会社とは別の肩書として「2枚目の名刺」を持つようなキャリアが形成できれば、将来的には自分にとってもプラスになるでしょう。

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