「トランプのアメリカ」でFRBは受難の時代に BNPパリバの米国チーフエコノミストに聞く
――米国経済は堅調なようです。
2016年は消費が好調な一方、製造業の基調は弱含みで、設備投資は原油価格下落の影響を受けていた。1年前と比べて今年は消費がそれほど強くなっていないが、製造業は回復し設備投資も上向いている。経済の成長ペースは1年前と変わらないが、中身はよりバランスの取れたものになっている。
――問題はないのでしょうか。
企業部門が過剰債務の状態にある。それが将来、経済の脆弱性になってくるかもしれない。借り入れの理由も2001年の景気後退の前のような投資ではなく、自社株買いとなっている。他方、家計部門では、学生ローンとサブプライム自動車ローンが負担になっている。しかし、いずれも深刻さは金融危機後のリセッション前の状況と規模が異なり、マクロ経済的に脅威となることはないだろう。
2018年には金融政策の舵取りが難しくなる
――賃金上昇率が加速しています。
米国内の労働市場はかなり逼迫してきている。FRBが問題視するほどのレベルで賃金が上昇しているわけではないが、もし、上昇率が3%を超えてくると、物価の観点からは一つのチャレンジだ。おそらく今年の年末までは大丈夫だろう。
――金融政策の舵取りが難しくなるのは、むしろ来年だと?
そうだ。2018年には賃金は3%を超えて上昇し、インフレ率も2%を上回るだろう。FRBは経済をスローダウンさせる必要があるが、そのタイミングでおそらく(トランプ政権の)財政拡張政策が動き出す。そうすると2019年は2018年以上に微妙な、トリッキーな年になる。
――トランプ政権の経済政策の方向性は見えにくくなりました。
トランプ大統領が共和党をコントロールすることは政治的に難しいとわかってきた。オバマケア改革は失敗し、国境調整税も議会を通過しそうにない。そのため、減税しようにも財源が不足している。
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