「トランプのアメリカ」でFRBは受難の時代に BNPパリバの米国チーフエコノミストに聞く

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――次の不況期への金融政策の「弾薬」がないということは深刻なことではないですか。

そうなったら、米国は為替政策に依存するだろう。(基軸通貨国である)米国には為替政策という弾薬はたくさんある。しかし、これは日本や欧州にとって大問題だ。次に経済の下降局面がやってきたときに、財政政策面でも金融政策面でも、よりポピュリズム的な政策が台頭してくる。そうなると、独立した中央銀行をエリートが席巻した時代や、2%インフレ目標という時代は歴史から「ワイプアウト」されて(消し去られて)しまう。

――日本は過去20年間、ポール・クルーグマン教授をはじめとする米国の経済学者の政策提言を受けて、過激な金融政策の実験場になってきました。それでも政策がうまくいっているという実感がありません。

その意見に同意する。それほどうまくいかなかったと思う。だが、その理由は何かというと、実行するのが遅すぎたからだ。感染症が広がる前に薬を飲み始めないといけなかった。

中央銀行は政治に支配され財政拡張を支える

――米国もいずれ、日本のように「劇薬」を飲むタイミングがやってきそうですか。

次の景気下降局面にはそうなるだろう。ポピュリズムがそれを要求する。

――中央銀行「受難の時代」ですね。

もっともっと厳しくなる。いずれにしても、中央銀行が神様だと思われていた時代は終わる。金融政策は重要であり続けるが、それを主導していくのは政治家になる。

1950年~70年代に政治が中央銀行にあまりに介入しすぎてインフレが起きた。そこで中央銀行から政治の色をはずし、今度はデフレが進行した。次のフェーズはこの振り子が逆に振れる。今後の中央銀行は、拡張的財政政策を支えるための資金提供という役割に変わっていくだろう。

英国のイングランド銀行が1694年に設立されたときの目的は、戦争のための資金を政府に提供することだった。中央銀行のもともとの役割は政府の目的を支えることだったが、その後、プルーデンス政策やインフレコントロールという機能が加えられていった。その意味で、これからの中央銀行は政府の目標をサポートする役割に戻るのかもしれない。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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