ディズニーの姫で「ソフィア」が別格な理由 「アナ雪」以上?伝統的な価値観からの自由

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映画『アナと雪の女王』(以下、『アナ雪』)は、これまでのプリンセス映画の常識を変えた、とされる。この物語は姉妹愛が主要なテーマであり、王子はチョイ役の悪役でしかない。主人公のアナ王女は、氷売りを仕事にする労働者階級の男性と恋に落ちるが、この「身分を超えた愛」すら、アナとエルサの大きな姉妹愛に比べれば、添え物扱いだ。要するに『アナ雪』では男女の恋愛は主要テーマでなかった。

「そしてお姫様は、王子様といつまでも、幸せに暮らしました」式の恋愛至上主義、伝統的価値観とまったく異なる物語を、最近のディズニープリンセスは提供している。

今回は、『アナ雪』は知っている、でも『アナ雪』しか知らない、という方向けにもうひとつ、お勧めのプリンセスものを紹介したい。『ちいさなプリンセス ソフィア』(以下、『ソフィア』)である。

米ディズニー・チャンネルで2013年から放送されたテレビアニメーションで、日本でも2015年からテレビ東京系の地上波で放映されていたが、映画にはなっていないので、知らない人もいるかもしれない。

大きく3つある、現代的なエッセンス

ソフィアは、8歳のお姫様だ。生まれながらの王族・貴族ではない。街で靴屋をしていたソフィアの母親が国王と再婚したことで、ある日突然、プリンセスに「なった」。国王には前妻との間に子どもが2人いる。

この設定には、いくつもの現代的なエッセンスが詰まっている。第1に、描かれるのは非伝統的な家族である。家族は血のつながりだけによってつくられるものではない。ソフィアは国王という義理の父親、彼の実子であるアンバー姫、ジェームズ王子ときょうだい関係を築いていく。

第2に、ソフィアの母親は再婚で王妃になったが、単に王の横でほほ笑むだけの飾りではない。折に触れてソフィアを励まし、自分らしく生きることを応援する。そもそも彼女は、再婚前は「靴屋さん」をしていた、働くシングルマザーとして自立していたのである。

第3に、様々な挑戦を通じてソフィアが見せる、人生は自らの手で切り開いていくもの、という強いメッセージである。ソフィアは生まれながらのプリンセスではなく、努力によりお姫様としての資質を「獲得」していく。ここで、人の運命は生まれながらに決まっているのではなく、学びと努力によって変えられるという、アメリカンドリームがわかりやすい形で描かれる。

この記事では、ソフィアが発揮するリーダーシップと「女らしさ」の枠組みを超えるように焦点を当てる。伝統的なおとぎ話において、お姫様は受け身であり、王子による救出やキスを待つ存在だった。新しい時代のプリンセスは、王子を待たず自らの運命を切り開く。また、現代のプリンセスは単にかわいいだけでなく、女の子には無理とされたことを実行してみせる。それは、たとえばこんな具合だ。

ソフィアたちが住むのは魔法の王国で、そこでは空飛ぶ馬ペガサスに乗ることができる。母親の再婚でお城に来たばかりのソフィアは「王子の競技」とされてきた「ペガサス・ダービー」に自分も出場したい、と言う。「プリンセスのすることではない」と義姉のアンバー姫から即座に否定されるが、ソフィアはあきらめない。それを見て国王は息子のジェームズ王子にソフィアにペガサスの乗り方を教えてやるように諭す。

これは、ディズニー公式チャンネルにより、Youtubeでも公開されている『ちいさなプリンセス ソフィア』の第1話で描かれるエピソードだ。既存の「男の子らしさ(王子らしさ)」「女の子らしさ(プリンセスらしさ)」にとらわれているアンバーとジェームズに対して、ソフィアの挑戦をそっと応援する国王と王妃の態度や言葉が興味深い。

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