30代人口急増!流山市、"異端"の街づくり マーケティングがあれば、地方都市は蘇る!

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流山市は「さくらんぼクラブ」や「子育てサロンコンサート」など、子供向けや子供教育向けなどのイベントも多数用意しています。「最近流山のイベントが多くて、それを楽しんでいると、東京に遊びに行く暇がない」という住民の声があるほどです。

都心の地下鉄の駅などに市のPRのポスターを張るという、地方都市にしては思い切ったPR戦略が功を奏している

――街のPRにも積極的ですが、これは市長がかつて民間企業に勤務していたことが影響しているのでしょうか。

PRするにはおカネもかかりますが、マーケティングにはPRが必須。ブランド化の一環として、PR活動は不可欠です。

私はかつて、アメリカに12年間住み、都市計画コンサルティング会社に従事していました。人口数10万人以上の都市では、自治体マーケティングが一般的で、それぞれがPR組織を持っていました。

その後、日本に移り、民間シンクタンクで都市政策やマーケティングにかかわりました。ただ、日本では自治体がPR組織を持つことは皆無でした。PRしたとしても、観光か事業誘致に関することぐらい。自治体がPR活動をしないことを、むしろ奇異に感じました。

――マーケティング戦略が浸透し、流山市は人口が順調に増えていますが、戦略の行方を決定づけた決定的な出来事、というものはありますか。

流山市にあるつくばエクスプレスの3つの駅のうち、2つは開通前、「流山中央」「流山運動公園」という駅名になる予定でした。開通の5カ月前まで、そう決まっていました。ただ、運営会社から、「本当にこれでよいのか」との確認があったこともあり、「流山おおたかの森」「流山セントラルパーク」という現在の駅名に変更したのです。

これは重要なポイントでした。流山市のブランディング戦略の「出発点」だったと思います。この駅名がついたことで、街に比較的高級なイメージが涌くため、マーケティング戦略を進めることができたのです。住環境の整備を担うマンション開発会社も、こちらの条件提示に耳を傾けるようになるなど、関係者が街のブランド化に本気で取り組んでくれるようになりました。

――今後の展開も気になります。どのような施策を考えておられますか。

今年6月に設置した「子ども・子育て会議」で、国に追随するのではなくて、地方自治体のモデルになるように効果的な施策や方針を提示していきたいです。

高齢者の住み替え促進策も考えています。戸建て住宅の管理・利用ができなくなりつつある高齢者に、市内の集合住宅や高齢者住宅などに住み替えていただき、今まで住んでいた住宅をリフォームして若い子育て世帯に賃貸・分譲する仕組みを構築したいと考えています。自治体としては初めての試みですが、ぜひ取り組んでいきたい。

流山市はようやく、マーケティングやブランド戦略の成果が出始めたところ。これからが真価を問われるときだと思っています。

 (撮影:梅谷秀司)

 

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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