受動喫煙問題解決には政治的な決断が必要だ 飲食店の禁煙問題、専門家が訴える

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――若い人は、まだ結構吸っている人が少なくないということですか。

そうです。30代や40代の特に男性が多いんです。年齢調整をすると、たばこ対策が遅れている東ヨーロッパ並の数字となり、世界的に見てだいぶ喫煙率が高いグループに属するんです。

――たばこの値段は近年、徐々に上げられていますが、その影響は。

値段は上がっているけれど、先進国の中では、1箱400~450円程度という価格は所得に比べると安いです。お隣の韓国は日本より高くなりました。2015年の年明けに約2倍程度の値上げをし、さらに飲食店を含めた受動喫煙防止の法規制を強め、禁煙治療も保険適用するとの3点セットを断行したんです。

――そうなんですか。韓国の状況は日本と変わらないのかと思っていました。

確かに韓国は、日本と同じようにこれまでアジアでは経済的にリードしている国にしては対策が遅れ気味だったんです。台湾や香港、タイ、シンガポールなどと比べると、ちょっと規制が緩かった。でも、今では韓国が対策を進めたので、日本はアジアの中でも遅れが目立つようになってきています。

財務省は急に税収が落ちることを懸念

――税金の絡みがあるから財務省が抵抗しようとするんでしょうか。

財務省は「たばこ事業法」を所管していますが、要はたばこが財源ですから、あまり急に税収が落ちると困ります。この事業法は、たばこ産業の健全な発展と財源の確保が狙いです。たばこの値上げとなると、税収が落ちるという話がいつも出ます。そんなカネ絡みの話となり、大切なのは健康か、それとも経済や財源なのかという議論になります。財務省の力が厚労省よりも強いので、結局押し切られてしまう。その結果、財務省もたばこ会社も納得できるのは、比較的小幅な値上げなんです。

今、議論となっている厚労省の健康増進法改正案は、誰も決着させられない状態です。それでも基本は健康問題だから、最後は東京オリンピック・パラリンピックの開催も視野に入れて首相官邸で議論するんじゃないですか。落としどころについては、禁煙を飲食店や居酒屋まで含めるかどうかですけれど、バーは例外となるのでしょう。それとも、30平方メートル以下の小規模な店は居酒屋も含めて例外にすることになるのか。厚労省は、居酒屋については譲らない姿勢を示しています。

――全面禁煙にする業態の線引きですが、どこで線を引くのか難しいですよね。居酒屋でなくても、イタリアンでも寿司屋でも、レストランは夜はお酒を出しますから。

居酒屋については、厚労省の考え通り、喫煙室の設置は認めても原則禁煙にすべきだと思います。ただしその時、お客さんの不便や健康被害の話になるでしょう。しかし守らなくてはいけないのは、実は一番長くそこに滞在している労働者なんです。それを考えると、罰則付きの法律ができるだけでも、かなり影響力が大きいでしょう。例外はいくつか認められても仕方ないと思ってるんですが、対策を進めるために罰則付きの法案が通ることが重要です。

――たばこを吸える店を例外的に認めればいいんじゃないかと言う人もいます。

たばこ産業側は、そのように「ここは吸える。昼間は禁煙か喫煙か選択できるようにしましょう」って言うんだけど、それは客目線なんです。働いてる人のことを優先して考えた対策が必要です。

いずれにせよポリティカルイシューそのもので、いろいろな利害が対立する問題です。健康面から考えたら間違いなくたばこを無くしたらいいわけです。しかし産業側は現に存在しており、たばこは合法的に売られているので、そこから社会としてどう足を洗うのか、それは簡単ではありません。政治的な決断をしないと解決しない問題です。

厚生労働科学研究費補助金「たばこ対策の健康影響および経済影響の包括的評価に関する研究」(研究代表者 片野田耕太)厚生労働科学研究費補助金「受動喫煙防止等のたばこ対策の推進に関する研究」(研究代表者 中村正和)
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