受動喫煙問題解決には政治的な決断が必要だ 飲食店の禁煙問題、専門家が訴える

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中村正和(なかむら まさかず)/自治医科大学卒業。大阪府に就職し、府立病院や府立成人病センターで臨床と疫学を研修、府立健康科学センター健康生活推進部長など務めた後、現職。専門は予防医学、公衆衛生学。研究テーマはたばこ対策と生活習慣病予防対策。たばこ規制に関する厚労科研研究班代表者。公職として厚生科学審議会専門委員(健康日本21<第二次>推進専門委員)、国民健康・栄養調査企画解析検討会構成員、日本公衆衛生学会たばこ対策専門委員会委員長(写真:Wataru Nakano)

一つはメディアキャンペーン。海外では電波媒体でたばこの害を知らせてきました。教育や所得レベルに関わらず、テレビを見る多くの人の理解が進みました。もう一つは、たばこのパッケージでの警告表示です。日本は細かい文字でたばこの健康影響が書いてあるだけで、インパクトが小さいことがわかっています。

――お洒落な外装だったりしますよね。

ええ。でも海外では、多くの国がパッケージにたばこの害に警鐘を鳴らす画像を載せています。見たくない人でも無意識のうちにある程度まで認識が上がるんですが、日本はそれがほぼ皆無。一方で、たばこ会社がテレビなどのメディアで「分煙が受動喫煙防止の解決策である」とする内容のコマーシャルを流していて、喫煙者と非喫煙者がマナーに基づいて住み分けて共存できるんだという誤った理解をする人も多いです。

国として知識を伝える方策ができていないので、結果として認識がとても低い。だから日本では世論もあまり盛り上がらないでしょ。禁煙運動を起こしているのは既存の禁煙の活動団体と保健・医療団体が中心で、一般市民が問題に気付いて憤慨してデモが起こることもないです。

財務省が警告表示を担当していることが根本的な問題

――日本では禁煙デモは起こらないです。2020年の東京オリンピックを控え、まだ道半ばですね。

たばこの真実が伝えられてないことに問題があるんです。財務省ががっちりと予算を押さえていて、メディアキャンペーンには予算が付いて来ませんでした。パッケージの警告表示も日本は財務省が所管する「たばこ事業法」で仕切れるようになっています。つまり、「たばこ規制法」を進める厚労省ではなく、売る側とかなり密接な財務省が警告表示を担当していることが根本的な問題です。これだけの先進国でたばこの政策は非常に遅れていて、世界の人からはかなり不思議に見えると思います。

――フランスやイタリアは、受動喫煙への対応が進んでいます。そんなイメージは日本にはあまり伝わっていないですね。

喫煙室の設置を認めていますが設置基準がかなり厳しくて、実質的には禁煙にせざるを得ないのが現状です。

フランスは自由を大事にする国のイメージがありましたが、意外と早く法規制を導入しました。諸外国の多くでは、国民の健康を守る観点からたばこ政策をエビデンス(科学的証拠)に基づいて実施しています。日本はそうではなく、自民党の「たばこ議員連盟」などが厚労省の健康増進法改正案に対して「全面的に禁煙にしたら小さな飲食店が潰れる」などと反対しており、議論がかみ合いません。

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