制度の存在意義を問う 8万人の無年金予備軍

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制度の存在意義を問う 8万人の無年金予備軍

急速に普及が進む確定拠出年金。その一方で、将来年金をもらえない可能性が高い人も急増している。(『週刊東洋経済』9月29日号より)

 確定拠出年金の加入者だったものの、企業を辞めた際に必要な手続きをしていないために、将来、年金を受け取れない可能性の高い人が8万人に上り、運用されずに放置されている資産が211億円(2007年3月末現在)に達していることが、資産を管理する国民年金基金連合会(以下、「連合会」)の調べで明らかになった。
 
 確定拠出年金は企業年金の一種で、加入者個人が運用リスクを負う。従来の確定給付型の企業年金の解散や縮小が相次ぐ中で、その受け皿として用意されたこともあり、制度創設後5年半で加入者数が240万人に達している。

 その一方で、「自動移換者」と呼ばれる、年金資産を放置したままの人の存在が大きな問題になっている。自動移換者はこの1年間に7割も増えて8万人を突破。必要な手続きをして連合会の個人型年金に資産を移換した人の総数を上回るという、「制度創設時には想定していなかった事態」(連合会の郡司巧・確定拠出年金部長)が起きている。

複雑な仕組みが一因

 確定拠出年金加入者のほとんどは掛け金を企業が支払う「企業型」に属している。しかし、企業型年金がない企業に転職したり、自営業者になった場合には、連合会が実施主体の「個人型」に移る手続きを取ることで、個人で掛け金を拠出することができる。

 また、個人型の加入資格がなくなり掛け金を拠出できない人(専業主婦など)もいる。そうした人は今までの資産を60歳の年金受給時まで連合会で運用し続ける必要がある(いわゆる運用指図者)。個人型加入者と同様に年間約5000円の運用管理手数料を取られるため、運用成績がよくなければ資産は目減りする。

 ところが、手続きをせずに6カ月が過ぎた場合は自動移換者となり資産が連合会に強制的に移され、利息もつかない。毎月50円の手数料を取られ、年金受給権も得られない。企業型から脱退する際に一時金を得る方法もあるが、資産が1万5000円以下の場合に限られている。

 こうした中で資産を放置する人が続出した。自動移換者の増加に歯止めをかけるには、事業主や関係機関による制度の周知徹底のほか、脱退一時金の要件の抜本的緩和などの手だてが必要だろう。

(書き手:岡田広行 撮影:尾形文繁)

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