「いきなり!ステーキ」は社長も非常識だった

安倍晋三首相に宛てた渾身の手紙とは?

――いきなり!ステーキを始める以前には経営危機もあった。どう振り返るのか。

2007年に心斎橋店で起きた暴行事件、2009年のO-157による食中毒事故があった。ペッパーランチの信用は失墜し、それから脱するのに10年ぐらいかかった。当時は「自分の脇の甘さだ」と周囲に言っていた。だが、あれがあったから今があるとつくづく思う。

暴行事件や食中毒事件など、さまざまなピンチを迎えた「ペッパーランチ」。現在は既存店売上高が好調に推移している(写真:尾形文繁)

心斎橋の件については安易に委託経営にしてしまった部分もある。以来、委託経営者の資質を見極めるための厳しい基準を作った。食中毒事故についても、工場で肉の品質に問題があれば、検査機関に持って行き、場合によっては廃棄するルールになっている。

食中毒事故の後、売り上げはどんどん下がった。FCが潰れたら大変だと資金補助もした。本部も利益がないから大変だったが、社員からは1人の脱落者も出なかった。

「社長、もう資金繰りがアウトです!」

――2010年には決算書に事業の継続性に強い疑いがあることを示す「継続企業の疑義注記」がつき、負債が資産を上回る債務超過寸前に陥った。

継続企業の疑義注記というのは、「市場から退場しなさい」というサインだ。銀行取引は一切できないし、リース会社もお金を貸してくれない。おまけに取引先の肉卸は現金決済を求めてきた。経理部長に「社長、もうダメです、もう資金繰りがアウトです!」と何回も言われたよ。

いきなり!ステーキの「カット場」は客の注文を聞いて肉を切るだけでなく、パフォーマンスの場でもある(撮影:梅谷秀司)

そんなとき、フジパンの物流子会社・富士エコーの社長が親会社のフジパンに掛け合ってくれて、2000万円を出資してもらった。

これはもう、本当に一生恩に着る話で。そのあと、友人に頼み込み、500万円ずつ出資してもらうことになった。フジパンの2000万円と合わせて9500万が集まった。これで倒産の危機を回避することができた。

結局、現金取引を求めてきた肉卸は手を引いてしまった。それで僕は、残る取引先だった肉卸のエスフーズさんに事情を説明した。「これからは今までの通常の決済でいいですから、納めましょう」と決断してくれた。FCに肉を納品し続けられることになり、本当に嬉しかった。今では1番の取引先であり、第2位株主だ。

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