60年を経て、似たような危機が朝鮮半島を覆っている。1953年に朝鮮戦争が休戦になって以降、米国の軍事力が北朝鮮の韓国侵攻を抑止してきた。一方、韓国と北朝鮮を分ける中立地帯に沿って配備された北朝鮮の大量のミサイルによって、米国の攻撃も抑え込まれてきた。報復を受ければ、人口1000万人の韓国首都・ソウルが壊滅しかねないからだ。
北朝鮮の核開発は、こうした均衡を脅かすものだ。長距離弾道ミサイルによって金正恩(キム・ジョンウン)政権が米国西海岸を爆撃する力を手にすれば、かつての問題が新たな形で浮上する。米国はロサンゼルスを危険にさらしてまでソウルを守るのか、という問題だ。
北朝鮮の暴走を止められるのは…
抑止戦略に頼る場合、米国の平和と安全は金正恩という33歳の独裁者に慎重かつ合理的な判断ができるか否かにかかるが、この若者は身内や側近の粛清を好む人物だ。
北朝鮮の核兵器庫に攻撃を加えるのは、第2次朝鮮戦争のリスクを伴う。金正恩体制は崩壊するだろうが、韓国は甚大な被害を免れない。日本も例外ではなかろう。米国はABM条約を破棄し、すでに迎撃システムの展開を始めたが、米、韓、日のいずれかがたった1発、核攻撃を受ければ、それだけで大惨事だ。
だが、20世紀の欧州とは重要な違いがある。中国が強い圧力をかけられる立場にあることだ。
北朝鮮は食料と燃料のほぼ全量を中国に依存している。にもかかわらず、中国は北朝鮮に圧力を加えるためライフライン断絶の制裁をちらつかせるのをためらっている。金政権の崩壊によって難民が大挙して国内に押し寄せること、そして朝鮮半島が韓国によって統一され、米国の同盟国となるのを恐れているのだ。
だが、北朝鮮の核への野心を放置するのは危険だ。中国はいずれ自国が核の脅威にさらされるか、国境を挟んだ戦争に直面する可能性がある。少なくとも中国が北朝鮮の核開発を阻止しないかぎり、東アジアはこれまでよりもはるかに危険な地域となるだろう。そして、そこには中国自身も含まれるのである。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら