北海道新幹線「打倒・航空機」の秘策を議論へ 盛岡-新青森間「時速320キロ」へ速度向上も

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東京駅を出発した東北新幹線は大宮を過ぎるとぐんぐんスピードを増し、宇都宮―盛岡間は時速320キロメートルで走行する。しかし、盛岡―新青森間の最高時速は260キロメートルにとどまる。盛岡―新青森間は法律に基づく整備計画によって建設された整備新幹線区間であり、最高時速260キロメートルと定められているためだ。

もし盛岡―新青森間を時速320キロメートルで走行できれば、所要時間を一気に10分近く短縮できる可能性がある。青函トンネル区間における高速化対策であれこれ悩むよりもずっとたやすく、まさに「奥の手」ともいうべきアイデアだ。

2013~2014年には、JR東日本が独自に盛岡駅以北の一部区間で営業時間外に時速320キロメートルの試験走行を行い、データ収集を行っている。

ただ、ここにも課題はある。整備新幹線区間における線路などのインフラは時速260キロメートルを前提に造られている。従って最高速度を引き上げる場合は、防音壁のかさ上げやトンネル微気圧波(トンネルを出入りする際に発生する空気の圧力波)対策、高速化に対応した軌道整備などの対策などが必要だ。

札幌延伸区間の速度は引き上げられるか

盛岡-新青森間の時速320キロメートル運転は実現するか(撮影:尾形文繁)

高速化の際、特に問題となりそうなのが騒音対策だ。防音壁のかさ上げといっても、「高架橋の構造上、防音壁をかさ上げできない区間もありうる。そういう場合は、高架橋の構造物を造り替える必要があり多額の費用がかかる」(国交省)。

もっとも、「最新の沿線居住状況に基づき、環境基準が解除される地区があるかもしれない」(同)。技術的な観点も踏まえて、その後も議論を継続していくという。

北海道新幹線は2030年度の札幌延伸開業に向けて建設が進んでいる。新函館北斗―札幌間も整備新幹線区間であり、最高時速260キロメートルを前提とした構造になっている。

「豪雪地帯だから時速320キロメートル走行は無理ではないか」(地元紙)という声もあるが、区間延長の3分の2を占めるトンネル内は雪の影響を受けない。盛岡―新青森間の速度向上の議論は札幌までの延伸区間、さらにいえば、同様に最高時速を260キロメートルに抑えられている全国の整備新幹線区間における速度向上の可能性を見据えた試金石となる。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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