アディーレの不適切業務めぐる「処分」の重み 懲戒の段階によって影響は断然変わってくる

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実際の懲戒はいわゆる弁護過誤、事件を処理せず放置するなどの事例から、依頼者への虚偽の報告、過大な報酬、弁護士会の会費滞納、弁護士の行方不明なども含め多岐にわたります。いわば問題のある業務活動を行った弁護士にペナルティを与える、最大にして万能の方法として運用されているものです。

弁護士自治において中核になる制度

実は懲戒制度がなぜ重要なのかという点は「弁護士自治」と深くかかわっています。たとえば他の士業である司法書士の監督官庁は法務省、行政書士は総務省、公認会計士は金融庁、税理士は国税庁……と弁護士を除くほとんどすべての士業は何らかの形で省庁の監督を受けています。

しかしながら、時に国家権力と対峙する弁護士については独立が守られ、監督官庁はなく、弁護士会自身が弁護士を処分しています。これは過去、治安維持法に反対した弁護士が資格を剥奪されたような歴史に基づくものであり、懲戒処分制度は弁護士自治において中核になる制度の1つなのです。

簡単に弁護士会の懲戒制度について説明すると、まず懲戒の手続きは誰でも行える懲戒請求(弁護士法58条1項)によりスタートします。

(出所)日弁連HP

(1)弁護士会は、懲戒請求があったとき(または弁護士会があると思料するとき)は、綱紀委員会に事案の調査をさせます(弁護士法58条2項)。

(2)綱紀委員会は、上記の調査により、対象弁護士等について、懲戒委員会に事案の審査を求める旨判断した時には、懲戒委員会に事案の審査を求め、審査が開始します(弁護士法58条3項)。

つまり、本件についての懲戒の審査はまず所属弁護士会の中での調査と審査の2段階のうち、1段階目の調査を終了した状況といえます。

たとえば2016年についてみると、懲戒の請求の総数は3480件、これについて調査が行われています。そのうち審査を求める旨の判断が出ている、つまり(1)の段階を突破したのが191件、さらに(2)の段階も審査をもってして懲戒相当という判断が出たケースが114件となります。

つまり数字で見るかぎり、(1)の段階から(2)に進んだ事件は、過去の統計上は半数~半数強ほどの件について最終的に懲戒処分が行われているといえます。最終的な処分は委員会の判断を待つことになりますが、客観的なHP上の表記については争いのなさそうな本件について(1)の綱紀を突破した以上、(2)でも懲戒処分相当という判断が出る可能性は相当程度あると言ってよいでしょう。

なお、弁護士法人に対する懲戒は、法人自身に対する懲戒ですので、懲戒の効力は法人を構成する社員である弁護士や使用人である弁護士に直接及ばず、本件では「法人・石丸弁護士・その他複数の弁護士」がそれぞれ懲戒請求されています。本件では後述するように「法人」が懲戒されると、極めて大きな影響が出る場合があります。

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