YouTubeの「売れっ子」に大企業が群がる理由 若者への「狭いけど深い影響力」に期待集まる
ウームのように複数のインフルエンサーを抱える企業は、MCN(マルチ・チャンネル・ネットワーク)と呼ばれている。2007年、企業がスポンサーとなって制作する動画の配信をユーチューブが解禁して以降、MCNは複数の人気ユーチューバーを束ねて管理する事業体として広がった。動画の視聴回数や収益の拡大、著作権管理など、制作活動のサポートを行うビジネスで、欧米を中心に成長してきた。
”ユーチューバー事務所”が広告代理店に?
ただここへ来て、ユーチューバーのマネジメントだけでなく、手掛ける仕事の幅が急激に広がっている。86カ国6500人以上のインフルエンサーを抱える世界最大級のMCN、米StyleHaul(スタイルホール)で、アジア太平洋地域のバイスプレジデントを務めるフィリップ・キッチャー氏は、「今、会社として最も注力しているのが、インフルエンサーとブランド(広告主)をどうつなぐかという部分だ」と話す。
具体的には「広告主のニーズを聞いて、どんな人物を起用するのがいいのか、どんなストーリーで動画コンテンツを作るのがいいのかなどを総合的に設計する、広告代理店のような側面を持つ会社になってきている」(キッチャー氏)という。
そもそも、インフルエンサーになるのはどのような人たちなのか。キッチャー氏は「有名になりたい、おカネを稼ぎたいというより、メイクや料理、ゲームなど自分の好きなものへの情熱が大きく、それを皆とシェアしたいという気持ちの強い人」と表現する。普通の会社員や学生が、空き時間に自分が興味のある分野で動画を作って投稿するケースが多いようだ。
彼らが新しい広告塔として注目される理由は、その身近さにある。「たとえばハリウッドスターやセレブが化粧品のCMに出てきても、その人が本当にその商品を使って、いいと思っているかはわからない。特に広告に対してもリテラシーの高いミレニアル世代にはいっそう響きにくい。でもインフルエンサーは、ユーザーにとって自分とあまり変わらない、距離が近い存在。より共感を得やすい」(キッチャー氏)。
スタイルホールが多く擁するのは、女性向けの美容・ファッション関連のインフルエンサー。したがって化粧品、衣料品、健康食品などの広告案件に強い。だが興味深いことに、獲得案件はその分野だけにとどまらない。
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