もうひとつは、「日本の水先案内人が少ない」ということ。シリコンバレーにいると、世界の中で日本のマーケットやインテレクチュアルパワーが無視できないことがわかります。現在、中国やインドは高い経済成長率がある一方で、カントリーリスクも高い。日本はシュリンキングマーケット(縮小するマーケット)と言われながら、グローバルに見ると興味がある人は大勢います。だけど、日本にいる当の日本人は、気づいていない。むしろ「縮小市場だし、GDPも3位になり、誰も日本のことを気にしないだろう」と悲観的になり、グローバルに出て行かない。
今、シリコンバレーでは、中国よりも日本に進出したい企業は多い。でも、ガイドがいない。たとえば、「次のフェイスブック」と言われるような、名の知れたベンチャーでさえ、いない。だから都合のよいことに、僕のところに情報や紹介が集まる。
世界で必要な“アーティキュレート”する力
伊佐山:岩瀬さんは2010年に世界経済フォーラム(ダボス会議)のヤング・グローバル・リーダーズに選出されて、今年はダボス会議でセッションをするなど、世界で活躍しています。「世界で活躍する」ということについてはどう思いますか。
岩瀬:ダボス会議で感じたことは、会社の実績や肩書き、国籍を気にせずに、「何を言うか」が重要だということです。ダボス会議では、「いいこと」「面白いこと」を言う人には耳を傾けるし、敬意を払ってくれる。反対に、いくら大企業の社長でも「いいこと」「面白いこと」を言わなければ、「つまらないね」「たいしたことない」となる。
僕は最初、会社の規模やグループにおけるステータスを無意識のうちに意識して、「おとなしくしてなきゃ」「端っこのほうにいて最後に話そう」と遠慮していたのですが、途中から「違う」と。「どんなに偉い人でも自分の思っていることは伝えていこう」と積極的に話をするようにしました。
ライフネット生命保険は今年4月、スイスの再保険大手で世界2番目に大きい、SwissRe(スイス・リー)が筆頭株主になったのですが、出会いはこのダボス会議でした。保険会社のトップ8人くらいのランチ会で僕が積極的に話したことがきっかけで、結果的に資本提携にまでつながった。
伊佐山:日本の感覚だと「従業員何人とか、売り上げどのくらい、創業何年」とかを聞かれるけど、世界に出るとあまり耳にしないよね。
岩瀬:日本人はまず名刺交換ですが、海外の人はすぐに名刺を出さず、話をした最後に「ちなみにこれ」といって投げる感じです(笑)。場合によってはフェイスブックで友達申請して終わり、なんていうこともある。それは、肩書きや組織によって自分を定義するか、個人として定義するかの違いだと思います。グローバルなビジネス環境下では、自分の実績や肩書きよりも、世界で何が起きているのかを理解して、それに対して自分の明確な答えがあり、それをきちっと”アーティキュレート”、正確に伝えることができることが重要だと思います。もちろんマナーやプロトコルはありますが、それができる人が世界基準の人材だと思いますね。
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