これからグローバル時代に生きるために
岩瀬:伊佐山さんは1カ月に1度程度、日本に戻ってきていて、日本の起業家とも親交が深いと思いますが、今、注目している起業家はいますか。
伊佐山:日本にいながら発想も大きく、世界を見ていて、フットワークも軽いという観点で、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの孫泰蔵会長ですね。もちろん「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」というヒットがあることはもちろんですが、日本の国内マーケットだけでも食べていけるのに、それでは面白くないと世界に出て行っている。海外に住んでいるわけではないのに海外のカンファレンスなどでよく会いますし、留学経験がないにもかかわらず、流暢な英語で話をしている。
さらに、スタートアップ企業支援を専門とするベンチャーキャピタルのモビーダジャパンを創業するなど、ベンチャーシーンを盛り上げることへの問題意識が高い。ソフトバンクの孫正義社長という“偉大な兄”がいる一方で、僕はそれと同じくらい大きいことをやっていると思います。
一方で、なぜ、若手起業家がぱっと思い浮かばないかというと、世界で起きていることを知らなすぎると感じるからです。日本の起業家イベントにいる人たちは日本のベンチャーシーンには詳しいけれど、グローバルで何が起きているかは知らない。たとえば、ビジネスプランコンテストなどを見ていても、「すごい画期的です」というビジネスモデルが、世界を見渡せば、100社近くあったりする。要するに最初から日本しか視野に入っていないし、情報武装の時点で弱い。
僕や岩瀬さんは当たり前のように英語のメディアも見ているし、海外の知り合いと話をする中で、世界で何が起きているかをマクロな視点でも、ベンチャーシーンというミクロな視点でもなんとなく知っている。それが大事だと思うのです。
スタートアップは、ものすごいユニークだとか、誰もやっていないことではなく、どちらかというとさまざまな人がやっている中で自分はこういうアプローチで改善するというほうが圧倒的に多い。であるならば、敵を知らないで猪突猛進でやるというのは、カネと時間の無駄だと思います。
岩瀬:実は僕は、注目している起業家はいません。でも、今の話を聞いて思い出したのですが、僕が応援しているベンチャーのひとつに、つくばにある「FULLER(フラー)」というスマホアプリ事業の会社があります。僕の元上司のロンドン在住モバイル関連のベンチャーキャピタリストを紹介し、出資をもらった企業なのですが、彼らの「やり取り」を見ていると面白い。
彼らは高専卒のエンジニア5人組で、つくばに一軒家を借りて始めた20代中盤の若者たちなのですが、英語を一生懸命勉強して、ロンドンとスカイプでつないで取締役会を英語でやっている。それにより、ほかのモバイルアプリベンチャーにも投資しているVCから、「スマホのマネタイズはこれとこれとこれしかないよな」とか、海外向けにローンチするときに「アジアなら受けるけど、ヨーロッパでは受けないからキャラクターを変えよう」と、アドバイスをもらっている。そういう“翻訳”してくれる人がいるから、まだ飛躍できていないけれど、可能性を感じます。伊佐山さんがこれからそういう役割を果たすのかもしれませんが、日本のエンジニアとグローバルのプロデューサーがうまく組み合わさることで、日本の技術のポテンシャルが発揮できるような気がしていますね。
(構成:山本智之 撮影:原田教隆)
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