欧米に比べ低い薬価 淘汰覚悟で改革に舵 <シリーズ・くすりの七不思議>

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座して待つだけでは抑制策に蹂躙(じゅうりん)される

「新薬を出せない製薬企業は、新制度の下では生き残れない。それだけ業界に厳しい案だ」。業界案の旗振り役となった新薬メーカーの団体である日本製薬工業協会の青木初夫前会長は繰り返し主張してきた。

実際に「国内製薬企業の再編をより活発化させるか、最悪の場合は淘汰される企業も出てくる。新薬が出せる大手企業寄りの提案」(中堅企業幹部)と身内からも不満が漏れている。それでも、薬価制度改革に舵を切ったのは、「座して待つだけでは、後発品の使用促進をはじめ政府の薬剤費抑制策に蹂躙(じゅうりん)される」(大手企業幹部)との反発からだ。

業界は、新薬の価格を優遇し、後発品のある先発品の価格を下げ、後発品の使用促進に全面協力することで、薬剤費の上昇は現行制度と同程度に抑えられるとの試算を出している。薬剤費高騰を懸念する厚生労働省や保険者に配慮した格好だ。

では、業界案を議論する中医協委員、与党はどう考えているのだろうか。ネックとなっているのは、薬価差が存在するのに、価格を維持する仕組みである。自民党厚労族トップの丹羽雄哉元厚相は「薬価差がいっぱいあったらダメ。どの範囲の薬価差までなら許容できるか、合理的な説明をすべきだ」と注文をつける。

保険者を代表する委員は「価格を下げないことが患者にどれだけのメリットがあるのか。後発品の使用が進んで薬剤費が高騰しないという精密なデータも欲しい」と現時点では否定的な姿勢を崩さない。

実現には、薬価差の縮小と、トータルの薬剤費が高騰しない、つまり後発品市場が伸びるという、二つの条件のクリアが不可欠となる。

薬価差は03年6・3%、05年8・0%、07年6・9%と推移している。この状況に対し、厚労省幹部を含め複数の関係者が、価格維持の仕組みを導入するには、薬価差「5%台」が最低線と見ている。

また、後発品の使用促進に関しても「政府公約の12年度末の数量シェア30%(現在19%程度)の達成が視野に入らないと議論は動かない」と多くの関係者が指摘している。

12年度の実施を目指して改革案の議論は始まったばかり。だが、その前途はあまりに多難だ。

(週刊東洋経済)

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