欧米に比べ低い薬価 淘汰覚悟で改革に舵 <シリーズ・くすりの七不思議>
現行制度では、新薬の研究開発コストを短期間で回収することはできない。しかも、政府挙げての後発品使用促進策が新薬メーカーに追い打ちをかける。このままでは医薬品産業が疲弊するとの危機感が薬価制度改革を求める声へとつながった。
業界案のポイントは四つある(下図)。【1】企業が価格を提案し、新たに設置する第三者組織が評価し、中医協が承認する。【2】特許期間中の新薬は、市場取引価格と薬価に乖離があっても引き下げない。【3】特許期間が終了した新薬は、市場取引価格と薬価の累積乖離分をまとめて引き下げる。【4】後発品の使用促進に全面協力する、というものだ。
【1】は、外国より低い薬価を改善し、米国やドイツのように自由価格に近い制度にするというものだ。日本医師会からは「新薬の価格が青天井になる」と批判が強い。だが、政府は製薬業界の国際競争力強化を政策課題として挙げている。革新的新薬であれば高い価格をつけられる【1】の制度は、製薬企業に大きな利益をもたらし、政策課題にマッチする。実現の可能性は低くない。
一方、【2】と【3】については難航しそうだ。現行、薬価は原則2年に一度引き下げられている。薬価と取引価格との乖離である薬価差を解消するためだ。医療機関は、保険者に、公定薬価で薬剤費を請求できる。ところが、医薬品を仕入れる価格には規制がないため、複数の医薬品卸を競わせ、安く抑えることができる。この差が薬価差として医療機関の利益となるため、薬漬け医療の温床として批判されてきた。
今回の業界案は薬価差があっても価格を下げない。当然、これへの政府の反発は強い。そこで業界は【3】の制度も登場させ、理解を求める。特許が切れ、後発品が出たときに薬価差分をまとめて引き下げる内容だ。