「南武線スマホ紛失」海外の発見者は人生激変 日本とジャカルタの懸け橋としてTV出演も
JR東日本からKCJへ出向している前田健吾ジェネラルマネジャーは、運用に関して以下のように語る。
「『今日、どの編成がどのように使われていて、メンテナンスしている編成は何なのか?編成数は足りているのか?予備編成はどこにあるのか?』ということが見える化できるようになったのは、ごく最近のことなんです。なので、ダイヤに則った車両運用が日本の様にシームレスに繋がって行くまでには、もう少し時間がかかります」。
一方、快適さに直結する「駅の環境」は徐々にだが改善が進んでいる。たとえば、KCJの幹線がX型に交差するマンガライ(Manggarai)駅。オマットさんがスマホを拾ったことを日本側に伝えたジャカルタ在住(当時)の会社員・浪井淳一さんは「日本でいえば、ちょっと都心から離れていて、路線が交差する西武線の所沢駅とか東村山駅とかそんな感じ」だと表現する。
この駅は、これまでは何本かあるホームをつなぐ跨線橋がなく、乗り換えなどでホーム同士を行き来する乗客は、1度線路面に降りて、ホームをつなぐ通路を歩かなければならなかった(日本の駅にある構内踏切に似ているが、インドネシアの駅の場合、踏切のバーがない)。
電車が駅構内に進入すると、反対側のホームに渡りたい乗客はホームに足止めとなる。電車も無理をして通路を渡る乗客を事故に巻き込まない配慮からか、かなり低速での駅進入を余儀なくされている。しかも、より効率の良い運行に向けて、1列車当たりの編成両数を増やしたことから、通路部分の混雑が増し、その解消は緊急課題となっている。
「スマホ発見」で地元の有名人に
それが、この3月にはマンガライ駅に地下通路が設けられ、安全性の確保にひとつ前進した。また、増加する列車に対してホーム増設が間に合わず、一部のホームでは車両のドア部分に合わせて階段状の鉄骨の足場を設けて仮設の乗り場としていたが、これも撤去されていた。
このように、徐々にではあるが日本の鉄道システムの好ましい点が、インドネシアでも見られるようになってきている。
ところで、今回筆者がジャカルタの地を訪れたのは、鉄道事情の取材のほかにもう1つの目的があった。オマットさんがこの春、かねてから交際していた女性と結婚。その披露パーティに、「スマホの持ち主」の野田さんとともに招待されたのだ。
前述の「南武線発・スマホ事件」は、オマットさん自身へも少なからぬ影響を与えた。ニュースは、シンガポールの英語メディア経由でインドネシアへももたらされた。それを受けてオマットさんのもとには、地元インドネシアのメディアが殺到。ついには本人自ら朝のワイドショーに生出演し、当時のエピソードを語るなど、「スマホ発見者」としてすっかり有名人になってしまった。職場では「日本とインドネシアの人々に、KCJの事業を広めた」として表彰も受けた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら